エンカのチカラ

『エンカのチカラ』は、日本コロムビアが発売したコンピレーションアルバムシリーズです。演歌歌手がJ-POPをカバーするという、前例のないコンセプトが特徴で、その斬新さから大きな話題を呼びました。キャッチコピーは「実力派演歌歌手×J-POP＝E-POP」で、タイトルの通り、演歌界の実力者たちが、その百戦錬磨の歌声を惜しみなく披露しています。

このシリーズの特徴は、収録曲の多くがアルバム内でひっそりと発表されたもので、廃盤となり入手困難なものがほとんどだった点です。現在でもサブスクリプションサービスで配信されていない楽曲が多く、その希少性も人気の要因となっています。また、Amazonやタワーレコードなど、演歌の売上が少ない店舗で売り上げを伸ばし、シリーズ累計6万枚というヒットを記録しました。価格は各2,000円と、比較的リーズナブルな価格設定も魅力の一つです。

『エンカのチカラ』は、発売当初から注目を集め、2010年10月4日放送の日本テレビ「しゃべくり007」では、マツコ・デラックスとミッツ・マングローブが本作を購入したと語っています。さらに、2018年9月25日にはTBS「演歌の乱」で本作の収録曲が歌唱された後、10年前の作品にもかかわらず、Amazonの演歌・歌謡曲コンピレーションアルバム部門で1位を獲得するという快挙を成し遂げました。この現象は、音楽マーケッターの臼井孝氏によって「『エンカのチカラ』後、E-POPカバーは10倍増」と分析されています。

オリコンニュースサイトでは、このシリーズの魅力を「『湘南』が『日本海』になる」と表現し、歌い手によって曲の印象が大きく変わるE-POPの世界観を鮮やかに描写しました。通常、邦楽コンピレーションアルバムはヒット曲を集めたものが主流ですが、本作は「演歌歌手によるE-POPカバー」という、当時としては斬新で「キワモノ」とも言える企画でした。そのため、各レコード会社で企画がなかなか通らず、当初の提案から発売まで5年近くの歳月を要したというエピソードも残っています。

シリーズは以下の通りです。

1. エンカのチカラ -SONG IS LOVE 80's&90's- (2008年12月3日発売、品番：COCP-35287)
2. エンカのチカラ -SONG IS LIFE 70's- (2008年12月3日発売、品番：COCP-35288)
3. エンカのチカラ -GORGEOUS 90's-00's- (2009年4月22日発売、品番：COCP-35548)
4. エンカのチカラ -GREAT 80's- (2009年4月22日発売、品番：COCP-35549)
5. エンカのチカラ -GOLD 70's- (2009年4月22日発売、品番：COCP-35550)

また、本作の収録曲は、様々な歌番組でも披露されています。以下はその一例です。

石原詢子『ハナミズキ』 - BSプレミアム「BS日本のうた」
鳥羽一郎＆小柳ルミ子『あんたのバラード』 - BS朝日「人生、歌がある」
長山洋子＆石原詢子『硝子坂』 - BS朝日「人生、歌がある」
藤あや子『愛染橋』 - BS朝日「人生、歌がある」
* 細川たかし『さよならイエスタデイ』 - TBS「演歌の乱」

『エンカのチカラ』は、演歌の新たな可能性を示しただけでなく、音楽のジャンルを超えた魅力を教えてくれる、画期的なコンピレーションアルバムシリーズと言えるでしょう。

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