エンガ州

エンガ州 (Enga Province)

概要

エンガ州は、南太平洋に位置するパプアニューギニア独立国のニューギニア島東部に位置する州の一つです。国内の地理的にはほぼ中央部にあたり、広大な山岳地帯の中にあります。州の行政の中心機能はワバックに置かれています。その面積はおよそ12,800平方キロメートルであり、2011年の国勢調査によれば、人口は約43万2045人でした。

地理

地理的に見ると、エンガ州はパプアニューギニア国内でも特に標高が高い地域として知られています。州内の大部分が海抜2000メートルを超える高地に位置しており、急峻な山々や広大な高原が広がっています。この高地環境が、州独特の地形や気候を形成しています。比較的標高の低い地域は深い谷を形成しており、ここが州を流れる主要な河川の源流や分水嶺となっています。具体的には、南へ向かうパプアニューギニア最大の河川であるフライ川の主要な支流であるラガイプ川と、北へ向かう広大なセピック川の支流であるライ川の分水嶺が州内に存在します。これらの河川やそれに沿った谷は、州内の交通や集落の形成にも大きな影響を与えています。

住民と文化

エンガ州には多様な民族グループが居住しており、それぞれのコミュニティが独自の文化や伝統を守りながら生活しています。言語においてもその多様性が顕著であり、主にトランス・ニューギニア語族に属する様々な言語が話されています。中でも、州の名称とも関連の深いエンガ語は広く使われている言語の一つです。その他にも、イピリ語やキャカ語といった言語が特定の地域で話されています。こうした言語の多様性は、エンガ州の豊かな文化的多様性の一端を示しており、それぞれのコミュニティが独自の社会構造や習慣を持っています。

災害

近年、エンガ州は痛ましい大規模な自然災害に見舞われました。2024年5月24日の未明、州内のマムディ山（Mt. Mameye）の斜面にあるヤンバリ村で大規模な地すべりが発生し、地域社会に甚大な被害をもたらしました。この壊滅的な地すべりにより、多くの住居や教会、学校などの建物、そして住民にとって重要な食料供給源である耕作地が大量の土砂に埋もれてしまいました。災害発生時のヤンバリ村の人口は4000人以上であったと推定されており、そのうち半数を超える2000人以上が土砂の下敷きとなり、犠牲になったと考えられています。この災害は、エンガ州の住民にとって大きな悲劇となり、国内外からの緊急の支援が呼びかけられています。高地の急峻な地形は、このような地滑り災害のリスクを内包しており、住民の生活における課題の一つとなっています。

エンガ州は、その壮大な自然景観、独自の文化、そしてそこに暮らす人々の営みによって特徴づけられる地域です。同時に、標高の高い山岳地帯という厳しい自然環境ゆえに、自然災害のリスクとも向き合っています。地域社会は、伝統的な生活様式と現代的な変化の中で、未来への歩みを進めています。

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