エンチクロペディー
『エンチクロペディー』（独: Enzyklopädie der philosophischen Wissenschaften im Grundrisse）は、ドイツの哲学者ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル（1770年 - 1831年）が著した哲学の百科事典であり、彼の主著の一つとして知られています。この書は、ヘーゲルがハイデルベルク大学教授時代に講義用として刊行したもので、彼の哲学体系を体系的に記述したものです。
『エンチクロペディー』は、以下の3つの主要な部分から構成されています。
1. 論理学（小論理学）：ヘーゲルは、先に著した『論理学』（大論理学）に対し、この論理学を『小論理学』と呼んでいます。ヘーゲルによれば、存在、本質、概念という三つの段階は、人間の認識が深まる過程であると同時に、絶対者（神）の属性でもあります。例えば、「神は存在する」という規定は初期段階に過ぎず、より深い考察として「神は絶対的理念である」という結論に至ると考えました。
予備概念
客観性に対する思想の第一の態度：形而上学
客観性に対する思想の第二の態度：経験論、批判哲学
客観性に対する思想の第三の態度：直接知
論理学の詳細な把握と区分
存在論：質（存在、定在、向自存在）、量（純粋量、定量、度、限度）
本質論：現存の根拠としての本質、純粋な反照諸規定（同一性、区別、根拠）、現象（現象の世界、内容と形式、関係）、現実性（実体性の関係、因果性の関係、交互作用）
概念論：主観的概念（概念としての概念、判断、推論）、客観（機械論、化学論、目的論）、理念（生命、認識、意欲、絶対理念）
2. 自然哲学：この部分では、自然を考察する様々な方法や概念を扱います。
自然の概念
分類
力学：空間と時間、場所と運動、物質と運動（慣性的物質、衝撃、落下）、絶対的な力学
物理学：普遍的な個体性の物理学（自由な物理的な天体、光、対立の天体）、個体性の物体（元素：空気、対立の元素、個体的な元素）、元素の過程、特殊な個体性の物理学（比重、凝集力、音、熱）、統体的な個体性の物理学（形態、個体的な物体の特殊化、光に対する関係、特殊な物体性における区別、特殊な個体性における統一性：電気）、化学的な過程（合一、ガルヴァーニ電気、火の過程、中性化、水の過程、その統体性における過程、分離）
有機体学：地質学的自然、植物的自然、動物的有機体（形態、同化、類の過程：類と種、性関係、個体の病気、個体の死）
3. 精神哲学：ヘーゲルは精神を単なる人間の主観ではなく、世界史の過程を通じて絶対精神が自己展開していくものと捉えています。
精神の概念
分類
主観的精神：人間学（心、自然な心、自然的性質、自然的変化、感覚、感ずる心、情感する心の直接態、自己感情、習慣、現実的な心）、精神の現象学（意識、そのままの意識、感性的意識、知覚、悟性、自己意識、欲望、承認する自己意識、普遍的自己意識、理性）、心理学（精神、理論的精神：直観、表象、想起、構想力、記憶、思惟、実践的精神：実践的感情、衝動と恣意、幸福、自由な精神）
客観的精神：法（所有、契約、不法に対する法）、道徳（計画、意図と福祉、善と悪）、人倫（家族、市民社会、欲求の体系、司法、警察と組合、国家）、対外法、世界史
絶対的精神：芸術、宗教、哲学
ヘーゲルは、『3』（三一性）という数にこだわり、主観的、客観的、絶対的といった形で哲学体系を構築しました。これはキリスト教の三位一体説に影響を受けたものと考えられます。また、ヘーゲルの弁証法は、フィヒテやカントの思想にも見られる要素を取り入れています。彼は、この書を通して、世界を自身の哲学体系に取り込もうとし、あらゆる学問もこの体系から導き出されるべきだと考えました。
『エンチクロペディー』は、複数の日本語訳が存在します。以下にいくつかの主要な翻訳を挙げます。
『ヘーゲル論理学 エンチクロペディ緒論及び第1部』速水敬二訳（1929年）
『ヘーゲル[哲学]]体系 第1[[論理学] 第2部自然[哲学]』速水敬二訳（1949年）
『論理学・形而上学 ヘーゲル哲学体系初期草稿』訳者代表：田辺振太郎（1971年）
『自然哲学』本多修郎訳（1973-1984年）
『エンチュクロペディー―哲学諸学綱要』樫山欽四郎、塩屋竹男、川原栄峰訳（1963年）
『ヘーゲル全集 1 改訳 小論理学 哲学体系1』真下信一、宮本十蔵訳（1996年）
『ヘーゲル全集 2a・b 自然哲学 哲学体系2』加藤尚武訳（1998-1999年）
『ヘーゲル全集 3 改訳 精神哲学 哲学体系3』船山信一訳（1996年）
『哲学の集大成・要綱』長谷川宏訳（2002-2006年）
『ヘーゲル全集 第10巻 『論理学』』知泉書館（2020-）
精神現象学
法の哲学
『エンチクロペディー』は、ヘーゲルの哲学思想を理解するための重要な文献であり、その後の哲学、社会思想、政治思想に大きな影響を与えました。
構成
『エンチクロペディー』は、以下の3つの主要な部分から構成されています。
1. 論理学（小論理学）：ヘーゲルは、先に著した『論理学』（大論理学）に対し、この論理学を『小論理学』と呼んでいます。ヘーゲルによれば、存在、本質、概念という三つの段階は、人間の認識が深まる過程であると同時に、絶対者（神）の属性でもあります。例えば、「神は存在する」という規定は初期段階に過ぎず、より深い考察として「神は絶対的理念である」という結論に至ると考えました。
予備概念
客観性に対する思想の第一の態度：形而上学
客観性に対する思想の第二の態度：経験論、批判哲学
客観性に対する思想の第三の態度：直接知
論理学の詳細な把握と区分
存在論：質（存在、定在、向自存在）、量（純粋量、定量、度、限度）
本質論：現存の根拠としての本質、純粋な反照諸規定（同一性、区別、根拠）、現象（現象の世界、内容と形式、関係）、現実性（実体性の関係、因果性の関係、交互作用）
概念論：主観的概念（概念としての概念、判断、推論）、客観（機械論、化学論、目的論）、理念（生命、認識、意欲、絶対理念）
2. 自然哲学：この部分では、自然を考察する様々な方法や概念を扱います。
自然の概念
分類
力学：空間と時間、場所と運動、物質と運動（慣性的物質、衝撃、落下）、絶対的な力学
物理学：普遍的な個体性の物理学（自由な物理的な天体、光、対立の天体）、個体性の物体（元素：空気、対立の元素、個体的な元素）、元素の過程、特殊な個体性の物理学（比重、凝集力、音、熱）、統体的な個体性の物理学（形態、個体的な物体の特殊化、光に対する関係、特殊な物体性における区別、特殊な個体性における統一性：電気）、化学的な過程（合一、ガルヴァーニ電気、火の過程、中性化、水の過程、その統体性における過程、分離）
有機体学：地質学的自然、植物的自然、動物的有機体（形態、同化、類の過程：類と種、性関係、個体の病気、個体の死）
3. 精神哲学：ヘーゲルは精神を単なる人間の主観ではなく、世界史の過程を通じて絶対精神が自己展開していくものと捉えています。
精神の概念
分類
主観的精神：人間学（心、自然な心、自然的性質、自然的変化、感覚、感ずる心、情感する心の直接態、自己感情、習慣、現実的な心）、精神の現象学（意識、そのままの意識、感性的意識、知覚、悟性、自己意識、欲望、承認する自己意識、普遍的自己意識、理性）、心理学（精神、理論的精神：直観、表象、想起、構想力、記憶、思惟、実践的精神：実践的感情、衝動と恣意、幸福、自由な精神）
客観的精神：法（所有、契約、不法に対する法）、道徳（計画、意図と福祉、善と悪）、人倫（家族、市民社会、欲求の体系、司法、警察と組合、国家）、対外法、世界史
絶対的精神：芸術、宗教、哲学
特徴
ヘーゲルは、『3』（三一性）という数にこだわり、主観的、客観的、絶対的といった形で哲学体系を構築しました。これはキリスト教の三位一体説に影響を受けたものと考えられます。また、ヘーゲルの弁証法は、フィヒテやカントの思想にも見られる要素を取り入れています。彼は、この書を通して、世界を自身の哲学体系に取り込もうとし、あらゆる学問もこの体系から導き出されるべきだと考えました。
日本語訳
『エンチクロペディー』は、複数の日本語訳が存在します。以下にいくつかの主要な翻訳を挙げます。
『ヘーゲル論理学 エンチクロペディ緒論及び第1部』速水敬二訳（1929年）
『ヘーゲル[哲学]]体系 第1[[論理学] 第2部自然[哲学]』速水敬二訳（1949年）
『論理学・形而上学 ヘーゲル哲学体系初期草稿』訳者代表：田辺振太郎（1971年）
『自然哲学』本多修郎訳（1973-1984年）
『エンチュクロペディー―哲学諸学綱要』樫山欽四郎、塩屋竹男、川原栄峰訳（1963年）
『ヘーゲル全集 1 改訳 小論理学 哲学体系1』真下信一、宮本十蔵訳（1996年）
『ヘーゲル全集 2a・b 自然哲学 哲学体系2』加藤尚武訳（1998-1999年）
『ヘーゲル全集 3 改訳 精神哲学 哲学体系3』船山信一訳（1996年）
『哲学の集大成・要綱』長谷川宏訳（2002-2006年）
『ヘーゲル全集 第10巻 『論理学』』知泉書館（2020-）
関連項目
精神現象学
法の哲学
『エンチクロペディー』は、ヘーゲルの哲学思想を理解するための重要な文献であり、その後の哲学、社会思想、政治思想に大きな影響を与えました。
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