樫山欽四郎

樫山欽四郎（かしやま きんしろう）は、1907年5月1日に生まれ、1977年8月7日に没した日本の哲学者です。彼の研究はドイツ近世哲学、特にヘーゲル哲学と実存哲学に焦点を当てていました。早稲田大学文学部の教授として長年教鞭を執り、多くの学生を指導しました。

生涯

樫山欽四郎は長野県小諸市で生まれました。旧制上田中学（現在の長野県上田高等学校）を卒業後、早稲田大学文学部哲学科に進学しました。大学卒業後は、同大学の助教授を経て、1949年に教授に就任しました。その後、早稲田大学高等学院長、第二文学部長、第一文学部長を歴任し、大学院文学研究委員長も務めました。

樫山はヘーゲル研究の第一人者として知られ、1951年にはヤスパース協会、1957年には実存主義協会の設立に参画し、理事を務めました。1960年には「ヘーゲル精神現象学の研究」で文学博士号を取得しています。また、大学運営以外にも、1969年には早稲田大学野球部長に就任し、東京六大学野球連盟理事、日本学生野球協会理事としても活動しました。さらに、兄の樫山純三が設立した樫山奨学財団の理事、日米大学野球世界選手権大会組織委員、明治神宮外苑運営委員、日本学術会議哲学研究連絡委員会委員など、多岐にわたる分野で貢献しました。

研究

樫山欽四郎の研究は、ドイツ観念論、特にヘーゲル哲学に対する深い理解に基づいています。彼の研究は、ヘーゲルの「精神現象学」を始めとする著作の解釈に大きな影響を与えました。また、実存主義哲学にも造詣が深く、ヤスパースやニーチェの思想についても研究を行いました。彼の著作は、哲学の難解な概念を明晰に解説し、多くの読者に影響を与えました。

業績

樫山欽四郎は、多くの著作を通じて哲学の普及に貢献しました。主な著書には、『ドイツ精神の生成』、『論理学』、『哲学叙説』、『ヘーゲル精神現象学の研究』、『哲学概説』、『ヘーゲル論理学の研究』、『悪』、『随想集 あたりまえのこと』などがあります。また、『樫山欽四郎哲学論集 哲学の課題』は、彼の思想をまとめた重要な著作です。翻訳においても、フィヒテの『知識学新序説』、フォイエルバッハの『将来の哲学の原理』、ヘーゲルの『精神現象学』など、重要な哲学書の翻訳を手がけました。さらに、ヘーゲルの『エンチュクロペディー』の翻訳にも携わるなど、その学術的貢献は非常に大きいものでした。

家族

兄に樫山純三がおり、女優の樫山文枝は娘です。

晩年

樫山欽四郎は、その生涯を通じて哲学研究に情熱を注ぎました。彼の業績は、日本の哲学界に大きな足跡を残し、今日でも多くの研究者に影響を与え続けています。

著書一覧

単著
『ドイツ精神の生成』目黒書店、1941年。
『論理学』世界書院、1950年。
『哲学叙説』世界書院、1953年。
『ヘーゲル精神現象学の研究』創文社、1961年。
『哲学概説』創文社、1964年。
『ヘーゲル論理学の研究』創文社、1970年。
『悪』創文社、1977年。
『随想集 あたりまえのこと』創文社、1978年。
『樫山欽四郎哲学論集 哲学の課題』講談社、2004年。

訳書
ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ著『知識学新序説』大学書林、1939年。
フォイエルバッハ著『将来の哲学の原理』小石川書房、1947年。
ヘーゲル著『精神現象学』河出書房新社、1966年。
ヘーゲル著『精神現象学』（新装版）河出書房新社、1973年。
ヘーゲル著『精神現象学』 上、平凡社、1997年。
ヘーゲル著『精神現象学』 下、平凡社、1997年。

監修
H.グロックナー『ヨーロッパの哲学 その史的考察』 上、早稲田大学出版部、1965年。
H.グロックナー『ヨーロッパの哲学 その史的考察』 中、早稲田大学出版部、1967年。
H.グロックナー『ヨーロッパの哲学 その史的考察』 下、早稲田大学出版部、1968年。

共著・共編・共訳
渡利弥生、樫山欽四郎『基礎論理学』 前篇、稲門堂書店、1942年。
渡利弥生、樫山欽四郎『基礎論理学』 中篇、稲門堂書店、1942年。
渡利弥生、樫山欽四郎『論理学』小石川書房、1948年。
渡利弥生、樫山欽四郎『論理学』評論社、1951年。
ルードヴィッヒ・ギース 著、樫山欽四郎、川原栄峰 訳『ニーチェ 実存主義と力への意志』パンセ書院、1954年。
ルードヴィッヒ・ギース 著、樫山欽四郎、川原栄峰 訳『ニーチェ 実存主義と力への意志』理想社、1970年。
樫山欽四郎、松浪信三郎 編『世界思想教養辞典 西洋編』東京堂出版、1965年。
ヘーゲル 著、樫山欽四郎、川原栄峰、塩屋竹男 訳『エンチュクロペディー』河出書房新社、1968年。
ヘーゲル 著、樫山欽四郎、川原栄峰、塩屋竹男 訳『エンチュクロペディー』河出書房新社、1972年。
ヘーゲル 著、樫山欽四郎、川原栄峰、塩屋竹男 訳『エンチュクロペディー』（新装版）河出書房新社、1987年。
ヘーゲル 著、樫山欽四郎、川原栄峰、塩屋竹男 訳『エンチュクロペディー』（ワイド版）河出書房新社、2005年。
樫山欽四郎、坂田徳男、土岐邦夫 訳『カント』 下、河出書房新社、1974年。
H.ワインシュトック 著、樫山欽四郎、小西邦雄 訳『ヒューマニズムの悲劇 西洋的人間像における真と偽』創文社、1976年。
カント 著、樫山欽四郎、坂田徳男、土岐邦夫 訳『実践理性批判・判断力批判・永遠の平和のために』三笠書房、1951年。
カント 著、樫山欽四郎、坂田徳男、土岐邦夫 訳『実践理性批判・判断力批判・永遠の平和のために』（新装版）河出書房新社、1989年。
カント 著、樫山欽四郎、坂田徳男、土岐邦夫 訳『実践理性批判・判断力批判・永遠の平和のために』（ワイド版）河出書房新社、2004年。

参考

『長野県人名鑑』信濃毎日新聞社、1974年

外部リンク

『樫山欽四郎』 - コトバンク
* 『樫山 欽四郎』 - コトバンク

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