ガルヴァーニ電気

ガルヴァーニ電気とガルヴァニズム

「ガルヴァーニ電気」または「ガルヴァニズム」という言葉は、化学反応によって電気が生み出される現象を指します。この名称は18世紀後半の物理学者であるアレッサンドロ・ボルタによって付けられました。言葉の由来は、同時代の化学者ルイージ・ガルヴァーニにあります。ガルヴァーニは、生物の体内で電気が発生し、その働きによって生体の筋肉組織が収縮・痙攣する現象を発見しました。特にこの生物電気の作用に着目した彼の発見はガルヴァニズムと呼ばれ、現代の電気生理学の起源と位置づけられています。ボルタは、ガルヴァーニが見出した現象を非有機体で再現することで（これが後のボルタ電池となる）電流が生じる仕組みを理論的に説明しましたが、ガルヴァーニ自身は、自らの発見した電気を生命活動の根源となる「動物電気」と捉えていました。

歴史的探求

ガルヴァーニは1780年代から1790年代にかけて、カエルを用いた実験を通して筋肉組織に対する電気の効果を発見しました。後世に伝わる有名なエピソードでは、皮を剥いだカエルの解剖中に、助手が誤って坐骨神経にメスを触れさせた際に火花が起こり、カエルの脚が動いた、という出来事があったとされています。ちなみに、電気刺激が筋肉を収縮させる現象自体は、この時代以前から（例えば「カエル検流器」のような形で）既に知られていた事実です。ガルヴァーニは雷のような大気由来の電流がカエルの脚に与える影響を調べている最中に、雷が落ちなくても、カエルの延髄に取り付けられた真鍮のフックが鉄の手すりに触れると脚が痙攣することを確認しました。後に、カエルの脊髄に接続した真鍮の金属電極を鉄板に接触させることでも、この現象が再現できることを突き止めました。彼はこの現象をもって、生物の筋肉が電気刺激に反応することを立証したと結論づけました。すなわち、生物の動きには電気の力が関わっていると彼は主張し、その電気を「動物電気」と名付けたのです。

一方、物理学者であったアレッサンドロ・ボルタは、ガルヴァーニが見出した現象は生命力によるものではなく、異なる種類の金属が接触することで電気が発生しているのだ、と解釈しました。この理論を裏付けるため、彼は人類初の化学電池であるボルタ電池を考案・製作しました。このように見解は異なったものの、ボルタは化学反応を通じて電気が生じる現象全体を、ガルヴァーニの功績に敬意を表して「ガルヴァニズム」と名付けたのです。

ガルヴァーニは1791年3月27日、「動物電気」に関する11年間の研究と実験の詳細をまとめた一冊の書物を刊行しました。ガルヴァーニの甥にあたるジョヴァンニ・アルディーニは、1798年に伯父が亡くなった後も研究を引き継ぎました。1803年にはロンドンのニューゲート監獄にて、処刑された人物の遺体に対し、四肢に電気刺激を与えるとどうなるかという、当時として衝撃的な公開実験を敢行しました。その際に遺体に生じた反応が克明に記録されています。

現代への影響

現代では、ガルヴァーニは「電気生理学の父」と称されています。ガルヴァーニとボルタの間で交わされた論争は、結果的に電気生理学、電気磁気学、電気化学といった新たな科学分野を生み出し、化学電池の発明へと繋がりました。

彼の発見は、科学の枠を超えて広範な影響を与えました。

大衆文化

メアリー・シェリーが1818年に発表したゴシックホラー小説『フランケンシュタイン』は、死体を繋ぎ合わせた存在に電気を流して生命を与えるという着想で書かれており、ガルヴァニズムの考え方に強く影響を受けています。

生命起源論

ガルヴァニズムは、生物の根源に関わる形而上学的な思考、さらには無生物からの生命発生論（アビオジェネシス）の分野にも影響を及ぼしました。例えば1836年、アンドリュー・クロスは電気を用いた鉱物の結晶生成を試みる実験中に、「太い毛の尻尾を持つ完璧な形の昆虫」が現れた、と記録に残しています。クロス自身は生命を創造したわけではないと弁明しましたが、当時の人々が電気と生命の関連性を強く意識していたが故に、彼の発見は「神への冒涜」と見なされ、脅迫を受ける事態となったのです。

医療分野

ガルヴァーニの甥であるアルディーニは、伯父が提唱した生体への電気作用という原理を応用し、「心神喪失」と見なされる数例に対し、症状の緩和に成功したと主張し、「完全な成果を得た」と記しています。現代医療において、電気けいれん療法は、重度のうつ状態にある妊婦や、他の治療法に反応しない大うつ病患者に対する選択肢の一つとして用いられています。一定の効果が期待できる一方で、治療を受けた半数近くが1年以内に再発する可能性も指摘されています。

診断や治療目的で人体に電気を利用する技術は、今日では電気生理学として確立されています。これには、心臓や筋肉、脳などの電気活動を記録する手法が含まれ、具体的には心電図、筋電図、脳波などの検査がこれにあたります。

関連事項

ガルバニ電池
生気論
* カエル電池

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