エンテロウイルス

エンテロウイルス感染症について

エンテロウイルス（Enterovirus; EV）は、ピコルナウイルス科に属する、エンベロープを持たない一本鎖RNA[[ウイルス]]です。主に腸管内で増殖するため、「腸管ウイルス」とも呼ばれています。このウイルス属には、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、パレコウイルスの各ウイルスが含まれており、近年新たに発見されたものにはEV68～71、73などの番号が付けられています。日本で手足口病の患者から検出される主なウイルスは、コクサッキーウイルスA16（CA16）とエンテロウイルス71（EV71）です。

特徴

エンテロウイルスは、主に経口感染や糞口感染によって伝播します。特に注意が必要なのは、エンテロウイルス71による中枢神経合併症です。無菌性髄膜炎や脳炎などを引き起こし、重篤なケースも見られます。これらのウイルスは、胃液の強酸性や膵液のアルカリ性にも耐え、消化管（特に腸）内で活発に増殖します。

症状

感染しても症状が出ない人も多くいますが、症状が現れる場合は、風邪のような症状やインフルエンザ様の症状を呈することがあります。子供によく見られる夏風邪の代表的なものとして、手足口病やヘルパンギーナが挙げられます。

新生児が感染した場合（まれに子宮内感染の場合も）、重症化することがあり、無菌性髄膜炎や心筋心膜炎を発症し、死亡例も報告されています。また、妊婦が感染すると早産のリスクが高まるため、注意が必要です。特に出産直前の2週間に感染すると、リスクはさらに高まります。

治療

エンテロウイルス感染症の治療は、基本的に支持療法が中心となります。胸膜痛がある場合は、鎮痛剤で痛みを和らげます。重症例では、オピオイド（麻薬性鎮痛剤）が必要になることもあります。エンテロウイルスによる無菌性髄膜炎の治療も、対症療法が中心です。

エンテロウイルス性心臓炎の場合は、不整脈、心膜滲出液、心不全などの合併症を予防し、治療を行います。現在、免疫グロブリンの静脈内投与が、エンテロウイルス性心臓炎の治療法として研究されています。

予防

一度感染すると免疫が得られますが、現在（2012年時点）ワクチンは開発中です。日常生活での予防としては、手洗いの徹底と、食肉が汚染されている場合は十分に加熱してから食べることが重要です。症状が回復した後も、便の中にウイルスが長期間排出されるため、排便前後の手洗いは確実に行いましょう。オムツや下着など、ウイルスが付着している可能性のあるものは適切に処理する必要があります。

参考文献

細矢光亮、手足口病を含むエンテロウイルス感染症 (新・皮膚科セミナリウム 急性発疹症 : 最新の動向と対応) 日本皮膚科学会雑誌 , The Japanese journal of dermatology 124(10), 1913-1917, 2014-09, ISSN 0021-499X

関連情報

手足口病
ヘルパンギーナ

外部リンク

エンテロウイルスについて - 横浜市衛生研究所
小児におけるウイルス感染症の基礎知識 - メルクマニュアル家庭版
エンテロウイルス感染症（第23巻、7号） - 東京都感染症情報センター

もう一度検索