エンリケ1世 (ポルトガル王)

エンリケ1世：ポルトガル王国の岐路に立った枢機卿王

エンリケ1世（1512年1月31日 - 1580年1月31日）は、ポルトガル王国アヴィス朝の国王であり、「枢機卿王」または「純潔王」として知られています。マヌエル1世とマリア・デ・アラゴンの息子であり、ジョアン3世の弟にあたります。

生涯

エンリケは当初、王位を継承するとは考えられていませんでした。そのため、ブラガ大司教、エヴォラ大司教、異端審問所長官といった聖職を歴任し、枢機卿にまで上り詰めました。また、彼はイエズス会士をポルトガルに招き、植民地における活動を支援しようとしました。

1555年以降、エンリケは甥のセバスティアン王の摂政を務めました。1578年にセバスティアンがアルカセル・キビールの戦いで戦死すると、王位を継承することになります。しかし、王家の存続のため、エンリケ1世は聖職を辞して結婚を試みましたが、ハプスブルク家の影響下にあった教皇グレゴリウス13世によって認められませんでした。

王位継承問題

エンリケ1世の後継者候補には、マヌエル1世の4人の孫と1人の曾孫がいました。

クラト修道院長アントニオ: エンリケの兄であるベージャ公ルイスの庶子。
ブラガンサ公妃カタリナ: エンリケの弟であるギマランイス公ドゥアルテの娘であり、ポルトガル王女の称号を持っていました。
スペイン王フェリペ2世: エンリケの長姉イザベルの子。
サヴォイア公エマヌエーレ・フィリベルト: エンリケの次姉ベアトリスの子。
* パルマ公子ラヌッチョ・ファルネーゼ: ブラガンサ公妃カタリナの姉マリアの長子。

国民の支持を集めていたのはアントニオでしたが、エンリケ1世はブラガンサ公妃カタリナを支持していました。フェリペ2世はエンリケ王に働きかける一方で、ポルトガルの貴族、聖職者、官僚に賄賂を贈りました。カタリナの夫であるブラガンサ公ジョアン1世は、フェリペ2世との対立を避けようとしました。サヴォイア公とパルマ公はスペイン王に仕えていたため、王位継承に名乗りを上げませんでした。

1580年1月11日、エンリケ1世はアルメリンでコルテス（身分制議会）を招集しましたが、後継者を決定することができませんでした。フェリペ2世は自分が選ばれることを期待していましたが、外国人支配を嫌う国民感情が強く、支持を得られませんでした。

1580年1月31日、エンリケ1世は後継者を指名しないまま死去しました。同年7月24日、セバスティアンの戦死時に王位を主張していたアントニオが即位を宣言しましたが、11月にはフェリペ2世が王位を要求し、アルバ公フェルナンド・アルバレス・デ・トレドを派遣しました。リスボンは陥落し、アントニオはアゾレス諸島へ退却。ポルトガルとスペインは合同しないという条件の下、フェリペ2世はフィリペ1世としてポルトガル王に即位しました。

スペインとの同君連合

1580年から1640年まで、スペインとポルトガルはハプスブルク家の王を戴く同君連合となりました。エンリケ1世の死は、ポルトガル王国の独立を一時的に失わせる結果となったのです。

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