エンレイソウ

エンレイソウ（延齢草）

エンレイソウ（学名: Trillium smallii）は、シュロソウ科エンレイソウ属に分類される多年草です。別名としてタチアオイ、ヤマミツバとも呼ばれます。エンレイソウ属の植物全体を指す場合もあります。

名称の由来

属名のTrilliumはラテン語で「3」を意味し、花弁、萼片、葉がそれぞれ3枚であることに由来します。エンレイソウという名前は、アイヌ語のエマウリが訛ったという説や、古くから薬草として利用され、長寿に繋がると考えられたことに由来するという説があります。「延齢草」の他に、「養老草」「延年草」といった長寿を連想させる異名も存在します。

特徴

エンレイソウは、太く短い根茎から20～50cmの茎を一本伸ばし、その先端に3枚の葉を輪生させます。葉は葉柄がなく、茎から直接生じます。葉の形状は丸みを帯びた菱形で、直径10～20cmほど。一般的にユリ目の植物の葉脈は平行脈ですが、エンレイソウの葉脈は網状脈であることが特徴です。

開花時期は4～6月で、高地では7月頃まで見られます。3枚の葉の中心から短い花柄が伸び、小さな花をつけます。花弁はなく、緑色または濃紫色の3枚の萼片を持ち、横向きからやや下向きに咲きます。雄しべは6本、雌しべは1本で、柱頭は3つに裂けており、子房には稜があります。稀に内花披片を持つ個体も存在します。

分布と生育環境

エンレイソウは、日本では北海道、本州、四国、九州に分布しており、低地から山地の落[[葉樹林]]のやや湿った場所に生育します。東アジアでは、サハリンや南千島にも分布しています。

利用

花後には球形で黒紫色の実をつけます。エンレイソウは中国には自生していませんが、近縁種のミヤマエンレイソウの根茎は中国で「延齢草根」と呼ばれ、古くから胃腸薬や催吐剤として薬草に用いられてきました。ただし、サポニンなどの有毒成分を含むため、過剰摂取は嘔吐や下痢などの原因となります。特に根茎に毒が多く含まれていますが、一部地域では新芽を山菜として利用することもあります。

その他

北海道大学の寮歌「都ぞ弥生」の歌詞には、北海道の春を彩る植物の一つとしてエンレイソウが歌われています。北海道大学では、サークルや機関紙、施設の名前にエンレイソウの名が用いられていますが、大学の校章に使われているのはオオバナノエンレイソウです。オオバナノエンレイソウの花弁（萼）は白いのが特徴です。

近縁種

ミヤマエンレイソウ（シロバナエンレイソウ） Trillium tschonoskii
オオバナノエンレイソウ　Trillium kamtschaticum

外部リンク

エンレイソウ - みんなの趣味の園芸

参考文献

* 山田隆彦監修『見わけがすぐつく 野草・雑草図鑑』成美堂出版、2023年1月20日、44頁。ISBN 978-4-415-32814-0。

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