オウスリー郡 (ケンタッキー州)

オウスリー郡の概要

オウスリー郡は、アメリカ合衆国ケンタッキー州の東山岳部炭田地域に位置する郡です。2010年の国勢調査によると、人口は4,755人であり、2000年の4,858人からわずかに減少しています。この国勢調査では、アメリカ合衆国で最も貧しい郡の一つとされています。郡庁所在地はブーンビル市であり、郡内全域でアルコール飲料の販売が禁止されている「ドライ郡」（禁酒郡）です。オウスリー郡は1843年に、クレイ郡、エスティル郡、ブレシット郡の一部を合わせて設立されました。郡名は、ケンタッキー州知事を務めたウィリアム・オウスリーに由来します。

歴史

郡設立の初期

1843年、オウスリー郡はクレイ郡、エスティル郡、ブレシット郡の一部を統合して誕生しました。これはケンタッキー州で96番目の郡であり、州知事ウィリアム・オウスリーにちなんで命名されました。その後、1858年にジャクソン郡、1870年にはリー郡が設立される際に、郡域の一部が削られました。

初期の開拓者としては、ジョン・レンティ・ベイカーとジョン・アブナーが知られています。彼らは1780年頃に現在のクレイ郡との境界付近に入植しました。ベイカーは銃の鍛冶屋で、ライフル銃身を切断する機械を開発しました。また、彼の父ロバート・ベイカーは、ケンタッキー・ライフルの開発に関与したとも言われています。ジョン・レンティ・ベイカーは「ロングハンター」としても知られ、テネシーやケンタッキーの森で狩猟を行い、毛皮を売るために遠くまで旅をしていました。

ベイカー家には、アメリカ史に残る確執の物語があります。1843年、トマス・ベイカー医師がジョン・ベイルズを射殺したことから、59年間続く血なまぐさい抗争が始まり、100人以上の命が失われました。

ブーンビルの最初の開拓者はジェイムズ・ムーア・シニアでした。彼の土地は町の大部分を占め、その家は現在のブーンビル・ホームズ・アパートの前にありました。ムーアの土地はムーアズステーションと呼ばれ、後にダニエル・ブーンにちなんでブーンビルと改名されました。1846年には町が法人化され、イライアス・ムーアが郡庁所在地の土地を寄付しました。

初期の恒久的開拓者には、ムーア家、ボーワン家、ベイカー家、ガバード家、レイノルズ家などがいます。土地特許の多くはバージニア州から与えられたもので、初期の特許を今も保持している家族もいます。1929年と1967年の火災で郡庁舎が焼失し、1929年の火災では郡の記録がすべて失われました。

南北戦争

オウスリー郡は、南北戦争が始まる19年前に設立されましたが、北軍への入隊率は国内で最も高い郡の一つでした。1860年の選挙で投票した有権者の13.64%が北軍に志願しました。これはカンザス州に次ぐ高い割合です。ケンタッキー州とテネシー州出身の兵士は、国内で最も体格の良い兵士とされていました。

オウスリー郡からの兵士の多くは北軍に加わりましたが、奴隷制度に反対する一方で、黒人の生命にはあまり関心がない者もいました。奴隷の数は1850年の136人から1860年には112人に減少しましたが、これは最大の奴隷所有者がテキサス州へ移住したことが原因と考えられています。

郡選出の州下院議員A・B・ギルバートは、ケンタッキー州が合衆国に残るかどうかを決める際に、自由州側に投票しました。これは南部支持派にとって大きな打撃となりました。また、カウッド家は南軍同調者であったため、北軍同調者によって家族を殺害されました。

南北戦争中には、北軍と南軍の兵士が郡内を通過し、いくつかの小規模な襲撃や侵略が起こりました。無法者集団による襲撃も発生し、郡の男たちは報復としてブレシット郡やウルフ郡に同様の襲撃を行いました。

禁酒

オウスリー郡はアメリカ合衆国で最も禁酒の厳しい地域の一つです。郡内ではアルコール飲料の販売が禁止されており、住民投票でも禁酒法の撤廃は否決されています。アルコールの消費は合法ですが、購入のためには他の郡まで車を運転しなければなりません。これにより飲酒運転が増加しているという調査結果もあります。

ケンタッキー州法では、ゴルフ場がある場合は、禁酒郡であってもアルコール飲料の販売を認めることができると解釈されています。これにより、いくつかのゴルフ場ではアルコールが販売されています。

オウスリー郡はワイン生産に適した地理的条件を備えていますが、現状ではワイン醸造は行われていません。これは、ケンタッキー州法でレストランで販売できるアルコール飲料が限定されているためです。

地理

アメリカ合衆国国勢調査局によると、オウスリー郡の総面積は198.09平方マイル（513.1 km2）であり、すべて陸地です。ケンタッキー川の南支流が郡内を流れ、郡内に降った雨水の多くがこの川に集まります。郡の北西部はケンタッキー川の流域に属しています。

特徴的な地形

オウスリー郡は、アパラチア高原、より正確にはカンバーランド高原に位置しています。郡内の最高標高は約1730フィート（527 m）で、最低標高は約650フィート（198 m）です。

隣接する郡

北: リー郡
東: ブレシット郡
南東: ペリー郡
南: クレイ郡
西: ジャクソン郡

国立保護地域

郡内には、ロッククライミングやハイキングで人気のダニエル・ブーン国立の森があります。

人口動態

2000年の国勢調査によると、オウスリー郡の人口は

収入

世帯収入中央値: 15,805ドル（国内で下位3番目、非ヒスパニック系白人が多数を占める郡では最下位）
家族収入中央値: 18,034ドル
男性収入中央値: 25,100ドル
女性収入中央値: 18,203ドル
一人当たり収入: 10,742ドル

貧困

人口の45.4%が貧困線以下
家族の41.7%が貧困線以下
18歳未満の56.3%が貧困線以下
65歳以上の34.5%が貧困線以下

2009年、政府の支給は個人収入の53.07%を占めました。

経済

収入源

天然資源: かつては炭鉱が主要な雇用源でしたが、現在はほとんどありません。ガス井と油井も存在しますが、操業されているものは少ないです。木材は郡経済において重要な役割を果たしています。
農業: タバコ栽培が盛んでしたが、政府の買収により減少しました。自給自足農業が一般的で、大規模な商業農業はほとんどありません。マリファナが過去に貧しい農家の収入源となっており、現在も一定の規模で栽培されています。
密造酒: 禁酒法により、密造酒が闇市場で取引されています。

観光

エイブラハム・リンカーンの浮彫が観光地として知られています。この浮彫は1930年代に旅のパックペドラー、グランビル・ジョンソンが制作しました。

教育

シュガーキャンプ・バプテスト教会が初等教育施設を運営しています。

著名な出身者

アール・コームス: 野球選手。ニューヨーク・ヤンキースで活躍し、野球殿堂入りしました。
ダニエル・ブーン: 伝説的な開拓者。1769年から1771年にかけてオウスリー郡を訪れ、その景観に感銘を受けました。その子孫は郡内のニューマン墓地に埋葬されています。
ドリー・ボーリング: キルト作家。「ドリー・スター」という模様を創出し特許を取得しました。
ジェイムズ・クロッター博士: ケンタッキー州歴史官、ジョージタウン・カレッジ歴史学教授。

脚注

詳細は、参考文献をご覧ください。

外部リンク

Eastern Kentucky Arts Project
Owsley Family Historical Society website
The Kentucky Highlands Project
* Profile of life in Owsley County, from The American Prospect

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