オオアワガエリ

オオアワガエリ（チモシー）: 世界の牧草を支えるイネ科植物

オオアワガエリ( Phleum pratense) は、北ヨーロッパと温帯アジアを原産とするイネ科の多年草です。一般的にチモシー、あるいはチモシーグラスと呼ばれ、世界中で重要な牧草として広く栽培されています。

チモシーの特徴: 優れた飼料としての性質

チモシーは、柔らかな葉を持つ草丈50～100cmの植物です。地下茎から多数の茎が束状に伸び、線形で長さ20～50cm、幅3～9mmの扁平な葉をつけます。葉の色は緑から灰緑色で、ざらつきはありますが毛はありません。

特徴的なのはその花序です。茎の先端から棒状に直立する花序は、長さ6～15cm、幅7～9mmで、無数の小穂が密生しています。小穂は三角形で扁平、先端から短い芒（のぎ）が出ています。この芒は、同型の第1、第2包穎にあたり、背面の中肋は緑色で、それ以外は膜質で淡い色をしています。各小穂には1つの小花が含まれます。

チモシーは、カモガヤなど他のイネ科植物と同様に、花粉症の原因となる植物としても知られています。その名前の由来は、アメリカに導入したTimothy Hansen氏にちなみ、アメリカで付けられたものです。イギリスでは『Cat's tail（猫の尻尾）』と呼ばれています。

チモシーの歴史: アメリカ経由で世界へ

17世紀後半、アメリカに導入されたチモシーは、そこで作物化され、その後ヨーロッパへ逆輸入される形で栽培が拡大しました。日本へは1874年（明治7年）、アメリカから北海道開拓使が北海道渡島国へ輸入し、試作したのが始まりです。

現在では、世界中の冷涼な気候地域で栽培されており、日本では北海道での栽培が盛んで、イネ科牧草の主要な種類となっています。東北地方や高冷地の地域でも利用されています。

チモシーの利用: 家畜飼料からペットフードまで

チモシーは、主に家畜の飼料として利用されます。刈り取られたチモシーは乾燥させて干し草として、あるいは発酵させてサイレージとして家畜に与えられます。また、放牧地にも利用されます。

近年では、ペットフードとしても広く利用されており、ウサギ、モルモット、チンチラなどの小動物の餌としてペットショップで容易に入手できます。

チモシーの品種: 多様な種類と特性

チモシーには、利用方法から採草型、採草・放牧兼用型、放牧型に分類される様々な品種があります。また、出穂期の違いによる早晩性（極早生～晩生）による分類も行われ、収穫時期の目安として利用されています。日本でも多くの品種が育成され、利用されています。

チモシーの近縁種: アワガエリとミヤマアワガエリ

チモシーと近縁の種として、アワガエリ(P. paniculatum)やミヤマアワガエリ(P. alpinum)が知られています。アワガエリは、かつては本州から九州に広く分布していましたが、ミヤマアワガエリは本州中部以北の高山帯に生育しています。

また、スズメノテッポウやヌメリグサなども、同様に棒状の花序を直立させるイネ科植物ですが、小穂の構造がチモシーとは異なります。

まとめ

チモシーは、その優れた飼料価値と栽培の容易さから、世界中で重要な牧草として利用されています。日本においても、北海道を中心に広く栽培され、家畜飼料やペットフードとして重要な役割を果たしています。その歴史、特性、そして多様な品種を理解することは、持続可能な農業や畜産業の発展に繋がるでしょう。

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