オオウバユリ

オオウバユリ（大姥百合）

オオウバユリ（学名：Cardiocrinum cordatum var. glehnii）は、ユリ科ウバユリ属の多年草であり、ウバユリの変種として知られています。

分布と生育環境

オオウバユリは、本州の中部以北から北海道にかけて分布しており、やや湿り気のある林内や林縁に自生しています。特に北海道札幌市北区の屯田防風林では、アイヌ文化保護の観点から保護区域が設けられています。

特徴

草丈は1.5〜2.0mに達し、開花期は7〜8月です。黄緑色または緑白色の花を10〜20個咲かせます。花後、翌春まで実をつけた枯れた茎が残ることがあります。開花した株は一生を終えますが、その根元には新しい株が育ちます。ウバユリと比較して大型で、花の数も多いのが特徴です。

食用

オオウバユリの鱗茎はデンプンを豊富に含んでおり、食用として利用できます。

アイヌ文化との関わり

北海道では、アイヌの人々がオオウバユリの根を「トゥレㇷ゚」と呼び、重要な食料としていました。ギョウジャニンニク（キト）と共に、生活に欠かせない植物でした。

旧暦4月は「モキウタ」（少しばかりウバユリを掘る月）、5月は「シキウタ」（本格的にウバユリを掘る月）と呼ばれ、女性たちはサラニㇷ゚（編み袋）と掘り棒を持って山野を巡り、オオウバユリの球根を集めました。

澱粉の採集方法

1. 球根から茎と髭根を切り落とし、鱗片を一枚一枚剥がして水洗いします。
2. 鱗片を大きな桶に入れ、斧の峰を杵代わりにして粘りが出るまで搗き潰します。その後、大量の水を加えて2日ほど置きます。
3. 数日後、水面に繊維や皮のクズが浮き、底に澱粉が沈殿します。繊維クズは「オントゥレㇷ゚」を作るために取り分けます。桶の底に溜まった澱粉を、半液状の「二番粉」と粉状の「一番粉」に分離します。
4. 二種類の澱粉は乾燥させて保存しますが、一番粉は水で溶いてイタドリやヨブスマソウの茎に流し込み、灰の中で蒸し焼きにして食べたり、二番粉は団子にしてフキやホオノキの葉で包み、灰の中で焼いて筋子や獣脂を添えて食べたりします。
5. 日常的に使用されるのは二番粉で、団子にして粥（サヨ）に入れます。一番粉は贈答用や薬用とされ、普段は口にすることが少ない貴重品でした。一番粉を水に溶いたものは、下痢止めの薬として用いられました。

澱粉採集作業中は、「酒」と「色事」に関する会話はタブーとされていました。澱粉が落ち着かなくなり、沈殿しなくなると信じられていたためです。

オントゥレㇷ゚

「醗酵させたウバユリ」という意味を持つ保存食です。トゥレㇷ゚（オオウバユリ）から澱粉を抽出する際に集めた皮や繊維などのカスを醗酵させて作ります。

作り方

1. オオウバユリの球根を潰して水に晒した際、水面や水中に浮く繊維や皮をイチャリ（笊）で集めます。
2. 水気を絞った後、フキやヨブスマソウの葉で包んで3〜10日ほど寝かせ、醗酵させます。
3. 醗酵させたものを臼で搗き潰し、こねてドーナツ状に丸めて乾燥させます。
4. 紐を通して炉の火棚に吊るして貯蔵します。
5. 食べる際は搗き砕いて水に漬けて戻し、団子にして粥（サヨ）に入れます。

近縁種

* ウバユリ（姥百合、学名：Cardiocrinum cordatum）

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