オオスズメバチ

オオスズメバチ（大雀蜂、学名：Vespa mandarinia）は、スズメバチ科に属する大型のハチです。以前は「Asian giant hornet」や「Japanese giant hornet」と呼ばれていましたが、生息域が世界中に広がっているため、現在は「Northern giant hornet」という英名が用いられることが多くなっています。

分布

オオスズメバチは、日本全国をはじめ、インド、東南アジア、東アジアに広く分布しています。日本では、北海道から九州にかけて生息し、南限は屋久島や種子島付近です。近年では、生息域を広げ、2019年にはアメリカ合衆国ワシントン州で確認され、2020年には同州で初の営巣も確認されました。

亜種

オオスズメバチにはいくつかの亜種が存在します。

Vespa mandarinia mandarinia：基亜種。中国東部、韓国、ロシア、日本に分布。日本産のものは亜種 Vespa mandarinia japonica として扱われることがあります。
Vespa mandarinia magnifica：中国西部、インド、ネパール、ミャンマー、ラオス、半島マレーシアに分布。
Vespa mandarinia nobilis*：台湾に分布。

形態

オオスズメバチは、その大きさが特徴的で、女王バチは体長約55mm（最大60mm）、働きバチは約40mm、雄バチは約45mmに達します。これは、世界最大のハチとして知られています。体色は、頭部がオレンジ色、胸部が黒色、腹部は黄色と黒色の縞模様で、羽は茶色です。雄バチは毒針を持っていません。

生態

オオスズメバチは、木の根元や土中、樹洞、人家の床下や屋根裏などの閉鎖空間に巣を作ります。巣は、枯れ木などから集めた繊維を唾液のタンパク質で固めて作られ、六角形の管が集まった巣盤が数段連なっています。

毒性と攻撃性

オオ[スズメバチ]]は、日本に生息するハチ類の中でも非常に強い毒性を持ち、攻撃性も高い危険な種です。毒の[[半数致死量]は4.1mg/kgです。毒液中には警報フェロモンが含まれており、巣の危機を仲間に伝える役割を果たします。また、毒針だけでなく、強力な大顎で噛み付くこともあります。

行動

飛行能力も高く、時速約50kmで飛翔し、狩りをする際は1日に約100kmもの距離を移動することができます。夏季には、幼虫に与える餌として、カナブンなどの甲虫類、他のハチ、カメムシ、セミなどの半翅目、ガやチョウなどの鱗翅目、スズメガやカミキリムシの幼虫など、様々な昆虫を捕食します。秋口には、大量の雄蜂や新女王蜂を養育する必要があるため、攻撃性が特に高まります。

捕食

カマキリなどの大型肉食昆虫や、セイヨウミツバチ、キイロスズメバチ、モンスズメバチ、ニホンミツバチなどの社会性ハチの巣を襲撃することがあります。襲撃は集団で行われ、巣を占領した後は、殺した働き蜂も幼虫の餌とします。特にキイロスズメバチやモンスズメバチの巣を襲撃する際には、大きな被害を被ることもありますが、成功すればその損害を補填できるほどの収穫を得ることができます。一方、チャイロスズメバチは外骨格が強靭なため、襲撃が失敗に終わることもあります。

その他

クヌギなどの樹液に集まることもあります。天敵としては、ヒトの他に、カマキリ類や猛禽類のハチクマなどが挙げられます。また、樹液をめぐっては、カブトムシやクワガタムシなどの大型甲虫に餌場を独占されることもありますが、最近の研究では、大型甲虫を追い払う行動も確認されています。オオムラサキも、樹液を争う際にオオスズメバチを追い払うことがあります。

人との関わり

オオスズメバチは、強力な毒と高い攻撃性から、人間にとって非常に危険な存在です。毎年、刺傷事故が発生しており、特に秋口には注意が必要です。一方で、その獰猛で危険な性格と圧倒的な存在感から、昆虫類の中でも高い人気を誇っています。また、幅広い種の獲物を捕食することから、農業害虫の抑制に役立つ益虫としての側面も持ち合わせています。

養蜂における影響

オオスズメバチは、養蜂においても大きな脅威となります。特に、トウヨウミツバチ（ニホンミツバチを含む）の巣を襲撃した場合、ミツバチはオオスズメバチを熱殺蜂球で蒸し殺そうと試みます。しかし、セイヨウミツバチはオオスズメバチへの対抗手段を持たないため、養蜂家の庇護がなければ全滅の危機に瀕します。オオスズメバチの生息しない小笠原諸島では、セイヨウミツバチが野生化し、在来のハナバチ類を圧迫するなどの問題も発生しています。

食用

一部の地域では、オオスズメバチの幼虫やさなぎ、成虫を珍味として食べる習慣があります。成虫は毒針を取り除き、蜂蜜や焼酎に漬け込んだりして食されます。また、オオスズメバチの幼虫が成虫に与える栄養液（VAAM）の成分を参考にした栄養ドリンクやサプリメントも販売されています。

まとめ

オオスズメバチは、その危険性にもかかわらず、生態系の中で重要な役割を果たしている昆虫です。人との関わりや、地域によっては食用としての利用もあり、多様な側面を持っています。オオスズメバチについての理解を深めることで、より良い共存関係を築くことが期待されます。

もう一度検索