オオニオイガメ属

オオニオイガメ属（Staurotypus）

オオニオイガメ属は、カメ目ドロガメ科に属する属で、オオニオイガメ亜科の模式属です。模式種はスジオオニオイガメです。

分布

オオニオイガメ属は、エルサルバドル南部、グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス北西部、メキシコ（オアハカ州東部、カンペーチェ州、キンタナ・ロー州南部、タバスコ州、チアパス州、ベラクルス州南部、ユカタン州南部）に分布しています。

形態

オオニオイガメ属は、ドロガメ科の中でも大型の種類で構成されています。最大種はスジオオニオイガメで、甲長は最大37.9cmに達します。一方、最小種はサルヴィンオオニオイガメで、甲長は最大でも25cm程度です。

背甲はややドーム状に盛り上がり、上から見ると中央部よりやや後方で最も幅が広くなる細長い楕円形をしています。項甲板は縦幅が短く横幅が長い長方形で、椎甲板と肋甲板にはそれぞれ1つずつ、計3つの筋状の盛り上がり（キール）があります。後部縁甲板は滑らかで、やや外側に広がり反りあがっています。

腹甲は小型で、十字型をしています。属名Staurotypusは「十字型」を意味し、腹甲の形状に由来すると考えられています。胸甲板と腹甲板の間には蝶番がありますが、これは内側に閉じて蓋をするためのものではなく、逆に外側に開くことで口を開けながら頸部を収納し、相手を威嚇しながら防御するのに役立ちます。橋は縦幅が短いものの横幅が長く、腋下甲板と鼠蹊甲板は大型で互いに大部分が接しています。腹甲の色彩は淡黄色や明灰色です。

頭部は大型で、吻端は突出しています。吻端は水面に突き出して呼吸したり、底質に突っ込み獲物を探すのに適しています。下顎には2本の髭状突起があります。四肢には爪と水掻きが発達しており、四肢や尾の基部には棘状の鱗があり、尾の背面には2列になった棘状の鱗が並んでいます。

幼体の背甲は扁平ですが、成長に伴い甲高が盛り上がります。

生態

オオニオイガメ属は、低地にある底質が泥で水草が繁茂する、流れの緩やかな河川や湖、池沼、湿地などに生息しています。

食性は動物食傾向の強い雑食で、魚類、両生類、小型のカメ、昆虫類、甲殻類、貝類、果実、種子などを食べます。舌弓を動かし喉を膨らませることで口内に陰圧を作り、食物を水ごと吸引し、硬い食物であれば強力な顎で粉砕して食べます。

繁殖形態は卵生です。性染色体（性決定機構はXY型）を持ち、雌雄は発生時の温度に左右されません（染色体性決定）。

分類

オオニオイガメ属には、以下の2種が知られています。

Staurotypus salvinii　サルヴィンオオニオイガメ
Staurotypus triporcatus　スジオオニオイガメ

人間との関係

オオニオイガメ属は、生息地では食用とされることもあります。しかし、開発による生息地の破壊、水質汚染、食用やペット用の乱獲などにより、生息数は減少しています。

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されています。以前は野生個体のみが稀に流通し、価格も高価でしたが、近年は欧米や日本国内での飼育下繁殖個体も流通するようになり、流通量が増えたため価格も低落しました。協調性が悪く、大型で顎の力が強いため、基本的に単独で飼育します。大型で成体は顎の力も強力なので、飼育の際には噛まれない様に注意が必要です。

飼育環境は、ベアタンクやアクアリウム、またはアクアテラリウムが適しています。底砂を敷く場合もありますが、雑菌の温床となったり誤飲する可能性があるため、敬遠されることもあります。

野生個体は極端な偏食をする個体が見られましたが、主に流通する繁殖個体は人工飼料や乾燥飼料にも餌付いていることが多いです。また、肥満しやすい傾向があるため、水量を増やして運動できる範囲を広げたり、餌の量を制限する必要があります。

関連項目

ドロガメ科
オオニオイガメ亜科

参考文献

千石正一監修 長坂拓也編 『爬虫類・両生類800図鑑　第3版』、ピーシーズ、2002年、176頁。
海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド 水棲ガメ1 アメリカ大陸のミズガメ』、誠文堂新光社、2005年、111-112頁。
安川雄一郎 「水棲ガメの世界」『ハ・ペト・ロジー』Vol.3、誠文堂新光社、2005年、28、35-37、44-45頁。
安川雄一郎 「ビギナーにおすすめのカメ12種〜初心者向けとして飼育者に薦めるカメ類〜」『エクストラ・クリーパー』No.1、誠文堂新光社、2006年、134-135頁。
* 安川雄一郎 「オオニオイガメ亜科の分類と自然史」『クリーパー』第42号、クリーパー社、2008年、32-52頁。

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