オオモミジ

オオモミジ（大紅葉）

オオモミジ（学名: Acer amoenum var. amoenum）は、ムクロジ科カエデ属の落葉高木であり、別名ヒロハモミジとも呼ばれています。イロハモミジの変種として分類されることもありますが、一般的には葉の大きさで区別されます。和名の由来は、イロハモミジよりも葉が大きいことにちなみ、古語の「もみつ（紅葉）」が転じた「モミジ」という名が用いられています。オオモミジは、イロハモミジと共に、俗にヤマモミジと呼ばれることもあります。

分布と生育環境

オオモミジは日本と朝鮮半島が原産で、日本では北海道中部以南、本州（青森県以南の太平洋側、福井県以西の日本海側）、四国、九州に分布しています。主に低地や山地の渓流沿いに自生し、特に太平洋側に多く見られます。また、公園や庭園にも広く植えられており、多くの園芸品種が存在します。日本庭園では、その美しい紅葉が特に重宝されています。

形態と生態

オオモミジは落葉広葉樹の小高木から高木に成長し、樹高は10〜13メートルに達します。樹皮は灰褐色で滑らかですが、成長するにつれて縦に浅い割れ目ができます。枝はイロハモミジよりも太く、葉は直径7〜11センチメートルと大きいです。掌状に7〜9裂し、裂片はイロハモミジよりも幅広いです。葉縁には細かい単鋸歯があり、イロハモミジと比較するとあまり目立たないのが特徴です。秋の紅葉は、木全体が黄色味がかった赤色や黄色に変化し、その変異は多岐にわたります。秋が深まると、1〜2日で一気に色づくこともあり、大きな葉が落葉する様子は非常に印象的です。

花期は春（4〜5月）で、横に伸びた本年短枝の先に散房花序を出し、暗赤色の花を咲かせます。花には雄花と両性花があります。果期は夏から初秋（10月）で、果実は長さ2〜2.5センチメートルの翼果で、イロハモミジよりも大きく、6〜9月に熟します。熟した果実は赤く色づき、よく目立ちます。翼果の開く角度は水平から150度ほどで、翼には葉脈状の筋があります。

冬芽は太く、8枚の芽鱗に包まれています。基部は葉柄基部に冬芽が隠れていた時の名残で、黄白色の膜質の鱗片に覆われています。枝先には仮頂芽が2個つき、側芽は枝に対生します。葉痕は浅くて細いV字形で、維管束痕が3個あります。

園芸品種

オオモミジには多くの園芸品種があり、班入りの葉を持つものも存在します。庭木として人気のノムラカエデ（ノムラモミジ）もその一種です。ノムラカエデは、イロハモミジの園芸品種、またはオオモミジの変種とされており、春の萌芽時には紅紫色を呈し、夏には緑色に変化します。

オオモミジ系の代表的な品種としては、‘大盃’（おおさかずき）があり、秋の紅葉が特に美しく、紅葉後も長く枝に残ります。また、紅葉が黄色になる‘一行院／一行寺’（いちぎょういん／いちぎょうじ）などと混植すると、色彩のコントラストが楽しめます。‘〆の内／占の内’（しめのうち）は、葉が全裂した線形であり、3裂や5裂、7裂など多様な形を持つため、‘七五三’とも呼ばれます。

主な園芸品種

イチギョウイン（一行院）、別名：イチギョウジ（一行寺）
オオサカヅキ（大盃）
ノムラモミジ - 別名 ‘武蔵野’、‘野村楓’（野村カエデ）。

オオモミジはその美しい紅葉と多様な園芸品種から、庭園や公園で広く親しまれている樹木です。

参考文献

亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年。
西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社、2000年。
邑田仁・米倉浩司編『APG原色牧野植物大図鑑II』北隆館、2013年。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社、2012年。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽』誠文堂新光社、2014年。
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年。
掘田満ほか 編『世界有用植物事典』平凡社、1989年。

関連項目

カエデ
木の一覧
イロハモミジ
ヤマモミジ

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