オキナグサ

オキナグサ（翁草）

オキナグサ（学名：Pulsatilla cernua）は、キンポウゲ科オキナグサ属に分類される多年草です。その特徴的な姿から「翁草」という名が付けられました。

特徴

オキナグサは、全体が白い長い毛で覆われているのが特徴です。根元から生える葉は、2回羽状複葉で、長い柄を持っています。茎につく葉は3枚が輪生し、無柄で線状に分裂しています。

花期は4月から5月で、花茎の先端に暗赤紫色の花を一つ咲かせます。開花時はうつむいて咲きますが、次第に上向きに変化します。花弁のように見えるのは萼片で、6枚あります。花が終わると、白い綿毛に覆われた種子ができ、その姿が老人の頭のように見えることから、この名前がつけられました。

別名としてネコグサとも呼ばれています。

分布と生育環境

オキナグサは、日本では本州、四国、九州に分布し、山地の日当たりの良い草原や河川の堤防などに自生します。アジアでは、朝鮮半島や中国の暖帯から温帯地域に分布しています。

かつては身近な植物でしたが、近年は自生地が減少しています。その背景には、草地の管理不足による荒廃、開発による生育地の減少、山野草としての採取などがあります。

薬効と毒性

オキナグサは全草にプロトアネモニンやラナンクリンなどの有毒成分を含んでいます。これらの成分は皮膚炎を引き起こす可能性があり、誤って摂取すると腹痛、嘔吐、血便、痙攣、心停止などの症状を引き起こす可能性があります。特にプロトアネモニンは心臓毒としても知られています。

一方で、漢方薬としては根を乾燥させたものが「白頭翁」と呼ばれ、下痢や閉経などの治療に用いられています。ただし、使用には専門家の指導が必要です。

現状

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類（VU）に指定されており、保護の必要性が高まっています。

近縁種

近縁種としては、ツクモグサ（学名：Pulsatilla nipponica）があります。

文化

宮沢賢治の童話「おきなぐさ」や、福島弘和作曲の吹奏楽曲「おきなぐさ～宮澤賢治の愛でた花～」など、文学や音楽の題材にもなっています。

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本Ⅱ離弁花類』、1982年、平凡社
林弥栄編『山渓カラー名鑑 日本の野草』、1983年、山と渓谷社
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）

関連項目

キンポウゲ科
宮沢賢治
福島弘和

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