オクス駅お化け

『オクス駅お化け』（原題: 옥수역 귀신、英題: The Ghost Station）は、2023年に公開された韓国のホラー映画です。日本のホラー界で活躍する脚本家の高橋洋が脚本を担当し、白石晃士が脚本協力として参加するなど、日本のクリエイターが関わった日韓合作作品として注目されました。

概要

本作は、韓国の大手ポータルサイト「ネイバー」にて2011年に発表されたホ・ラン作の同名ウェブトゥーンを原作としています。このウェブトゥーンはミステリー短編として公開され、1億ページビューを超える閲覧数を記録し、高評価を得た人気作でした。しかし、映画版が原作の内容を直接的に踏襲しているのは、駅のホームで奇妙な動きをする女性が実は怪異であった、という冒頭の短いシークエンスにとどまっています。物語は、韓国ソウルに実在するオクス駅を舞台に展開します。ウェブメディアの記者である主人公ナヨンは、サイトの閲覧数を伸ばすためのネタとして、駅で発生した人身事故を記事にしようと取材を開始します。その過程で、彼女は駅にまつわる不可解で恐ろしい怪異現象に次々と巻き込まれていきます。周囲で犠牲者が出続ける中、ナヨンはオクス駅の過去に隠された忌まわしい出来事と、それによって生まれた呪いの根源に迫っていくことになります。日本の劇場で公開された際には、映倫によってPG12区分に指定されました。

製作背景

本作の企画は、2015年頃にプロデューサーのイ・ウンギョンが高橋洋にメールで連絡を取り、「韓国のウェブトゥーンを長編映画のシナリオにできないか」と打診したことから始まりました。イ・ウンギョンが高橋に依頼した決め手は、韓国でホラーといえば東宝映画の『リング』が広く認識されており、その脚本を手掛けた高橋洋に直接オファーすることが自然な流れだったためだと語っています。打診を受けた高橋はソウルでのシナリオハンティングに参加しました。高橋は、自身のホラー作品において「呪いや恐怖の根源は社会問題や実際の事件と結びつくことが多い」と考えており、本作の脚本執筆にあたって、以前から関心を持っていた戦後日本の寿産院事件を着想源の一つとしました。この事件をモチーフに、プロットに養護施設という要素を組み込むアイデアが生まれました。オクス駅での取材で、実際に駅員から人身事故や幽霊の話を聞いた高橋は、2015年にシナリオの第一稿を執筆しました。しかし、この第一稿は複雑な構成であったため、一度立ち止まって検討するために時間がかかりました。プロデューサーのイ・ウンギョンは、高橋の第一稿を読んで感じた「怖い」という作品の核となる部分は残してほしいと、韓国側のスタッフにも伝えたといいます。その後、主に10代の観客層をターゲットとしたいという韓国側の要望を受けて、白石晃士とイ・ソヨンが改稿に参加し、よりシンプルな内容へと変更されました。しかし、ウェブメディアの女性記者と駅員が協力し、オクス駅で起きた謎の事件を追い、その根源である過去の施設にたどり着くという物語全体の骨子は、高橋が最初に提示したアイデア通りに進められています。完成した映画を観た高橋洋は、「自分が作った複雑なストーリーを、本当にシンプルでエンタメ性の高い作品にしてくれた」「たぶん自分一人では、ここまでのものにはならなかった」と評価し、「日本人が考える怖いことと韓国の人が考える怖いことの融合」が実現できたことへの喜びを語っています。

あらすじ

ウェブニュース記者のナヨンは、取材での手違いから多額の示談金を請求されてしまいます。上司であるモ社長から厳しく叱責されるナヨンでしたが、モ社長は高いPV（ページビュー）数を稼げるヒット記事を書けば、示談金を肩代わりすると持ちかけます。ジャーナリストとしての信念と、失敗の穴埋めという現実の間で葛藤しながらも、ナヨンはPV稼ぎに走ることを余儀なくされます。そんな時、オクス駅の廃駅ホームから線路上に降りたテホという男性が、回送電車に轢かれて死亡する事故が発生します。ナヨンはこれを記事にするため、駅員のウウォンと協力して調査を開始します。事故当時の監視カメラ映像を確認したウウォンは、テホが轢かれる直前にホームの下に子供の姿があったとナヨンに伝えます。ウウォン一人の証言に確信を持てないナヨンは、霊感が強いという湯灌師のヨムにも話を聞きに行きます。ヨムもまた、事故直後にホームの真下で子供を目撃したと証言し、その子供は名前を尋ねると無言で4桁の番号が書かれたタグを見せたといいます。ナヨンはテホを轢いた電車の運転士にも取材を試みますが、運転士は精神的に不安定で「離れないんだ」と繰り返し、4桁の番号をうわ言のように呟くばかりです。運転士への取材内容を記事として公開すると、PVは急増しますが、記事を見たモ社長は激怒します。実は運転士は前夜に自殺しており、ナヨンが一体誰に取材したのかと問い詰めます。ナヨンが自身が運転士と会った時の監視カメラ映像を確認すると、そこには誰もいない空間に話しかけている自身の姿が映っていたのでした。ナヨンはさらに、事故死したテホの妹テヒに接触します。テヒは幼少期の記憶が曖昧で、催眠療法で過去を辿ろうとしても、決まって井戸が見える場所で記憶が途切れると話します。テヒは兄の遺品の中から、オクス児童養護施設の前で父、兄、幼い自分が写った写真を見つけ、自身の思い出せない過去がオクス駅と関連しているのではないかと考え始めます。さらに、テホのスマートフォンには、彼がオクス駅の線路上を進みながら何かを発見する様子を捉えた動画が残されていました。変死体の腕に残された爪痕、繰り返し現れる4桁の番号、謎に包まれた児童養護施設、井戸、そして不可解な子供たちの存在。これらの断片的な要素が複雑に絡み合い、ナヨンとウウォンの前に、オクス駅に隠された恐るべき真実が徐々に姿を現していくのでした。

スタッフ・キャスト

スタッフ

監督 - チョン・ヨンギ
製作 - イ・ウンギョン、イ・ヨンミン、イ・ヘギョン
脚本 - 高橋洋、イ・ソヨン
脚本協力 - 白石晃士
助監督 - イ・セジョン
美術 - イ・ヒョンジュ
撮影 - ソン・サンジェ
編集 - イム・シンミ

キャスト

パク・ナヨン - キム・ボラ（吹替: 小松未可子）
チェ・ウウォン - キム・ジェヒョン（吹替: 斉藤壮馬）
テヒ - シン・ソユル（吹替: 葛原詩織）
モ社長 - キム・スジン（吹替: 浅野まゆみ）
スンジュン - オ・ジンソク（吹替: 白石兼斗）
湯灌師ヨム・スプサ - キム・ガンイル（吹替: 咲野俊介）
テホ - パク・チェハン
運転士 - キム・グァンヒョン

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