オグルマ

オグルマ（小車）

オグルマ（学名：Inula britannica subsp. japonica）は、キク科オグルマ属に分類される越年草または多年草です。ヨーロッパから極東ロシア、日本にかけて広く分布するカラフトオグルマ（Inula britannica subsp. britannica）の亜種とされています。

特徴

オグルマは地下に根茎を持たず、根から不定芽を出して繁殖します。茎は直立し、上部で枝分かれして高さ20-60cmほどに成長し、全体的にまばらに毛が生えています。根出葉と茎の下部の葉は開花時期には枯れてなくなります。茎につく葉は互い違いに生え、長楕円形から披針状長楕円形で、長さは5-10cm、幅は1-3cm程度。先端は鋭く、基部は円形で細くなり茎を半ば抱き込むように付きます。茎の中央部の葉が最も大きく、上部の葉はやや小さいものの形状はほぼ同じです。葉の縁には低い鋸歯が見られ、葉質はやや硬いのが特徴です。

花期は7月から10月にかけてで、茎の上部で枝分かれした先に、直径2.5-3.8cmほどの黄色い頭状花序を散房状につけます。頭花の外側には雌性の舌状花が1列に並び、先端が浅く3つに分かれています。中央部には両性の筒状花が多数集まり、筒部の先端は5つに分かれています。総苞は半球形で、長さ7-8mm、直径13-19mm。総苞片は5列に並び、外側のものは披針形で緑色をしており、縁には短い毛が生えています。果実は痩果で、長さは約1mm、10本の肋があり、毛が生えています。冠毛は長さ約5mmです。染色体数は2n=16、24です。

分布と生育環境

オグルマは、日本では北海道、本州、四国、九州に分布しており、湿地、休耕田、川岸など、湿った場所を好んで生育します。同じオグルマ属のホソバオグルマと比較すると、人為的な攪乱の影響を受けやすい場所に生える傾向があります。国外では、朝鮮半島、中国大陸、ウスリー、アムール、モンゴルなどに分布しています。

名前の由来

和名の「オグルマ」は「小車」を意味し、その由来は、端正な頭状花序から放射状に伸びる舌状花が、小さい車輪を連想させることに由来するとされています。

種小名の britannica は「英国の」という意味ですが、基準亜種であるカラフトオグルマはイギリスには自生していません。この britannica は、古代の植物名 Herba Britannica に由来します。亜種名の japonica は、その名の通り「日本の」という意味です。

基準亜種：カラフトオグルマ

基準亜種はカラフトオグルマ（Inula britannica L. subsp. britannica）で、別名ヨウシュオグルマ、マンシュウオグルマ、ツイミオグルマとも呼ばれます。全体の姿や生態はオグルマとよく似ていますが、カラフトオグルマの方が背丈が低く、20-40cm程度です。茎の上部に生える毛が多く、葉は細く、上部の葉は披針形、下部の葉は倒披針状長楕円形から狭長楕円形をしており、葉の基部が広がり茎を抱くのが特徴です。葉の裏面にも毛が多く生えています。頭花の形状はオグルマとほぼ同じです。日本では北海道と本州の東北地方の太平洋側に分布し、湿地に生育しています。国外では、樺太以北の極東ロシア、シベリア、中国大陸（東北部）、モンゴル、中央アジア、ヨーロッパに広く分布しています。

保全状況

オグルマは、国（環境省）のレッドデータブックやレッドリストには選定されていませんが、多くの都道府県で絶滅危惧種として指定されています。生育地の減少や環境の変化により、各地でその数を減らしています。

都道府県別レッドリスト選定状況（例）

埼玉県：準絶滅危惧(NT)
千[葉]]県：要保護[[植物]
東京都：絶滅危惧IA類(CR)
神奈川県：準絶滅危惧(NT)
富山県：絶滅危惧II類
石川県：絶滅危惧I類(CR+EN)
三重県：準絶滅危惧(NT)
滋賀県：その他重要種
京都府：絶滅危惧種
大阪府：絶滅危惧I類
兵庫県：Cランク
奈良県：希少種
和歌山県：絶滅危惧IB類(EN)
徳島県：絶滅危惧II類(VU)
香川県：絶滅危惧I類(CR+EN)
愛媛県：絶滅危惧IB類(EN)
福岡県：絶滅危惧II類(VU)
長崎県：絶滅危惧IB類(EN)
熊本県：準絶滅危惧(NT)
鹿児島県：絶滅危惧II類
* 沖縄県：情報不足(DD)

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