オゴデイ・ウルス

オゴデイ・ウルス（Ögödei ulus）

オゴデイ・ウルスは、モンゴル帝国の第2代皇帝であるオゴデイによって治められた王家の領域です。13世紀初頭に設立され、15世紀の初めまで存続したとされており、オゴデイ本人の名に由来しています。かつては「オゴデイ・ハン国」という名称で呼ばれることもありましたが、これは長い研究の過程で現在ではあまり使用されていない呼称です。これらの名称は歴史家による創作的な呼び名であり、当時の文献に基づいたものではありません。

具体的に、オゴデイ・ウルスは1306年まで中央アジア、特にエミル川流域（現・中国新疆ウイグル自治区）周辺の地域を中心に存在していました。しかし、近年の研究では「ウルス」と「国家」の概念の違いが指摘され、単純にウルスをハン国と同一視することはできないという指摘もされています。

オゴデイ・ウルスは、チンギス・カンによって構成されたモンゴル帝国内の「一族ウルス」の一例として位置付けられています。チンギス・カンは、大モンゴル国（イェケ・モンゴル・ウルス）を成立させ、その中に複数の氏族や遊牧集団を統合しました。オゴデイ・ウルスは、その中の一つであり、様々な派閥や権力闘争が繰り広げられました。

オゴデイ・ウルスの成立と歴史的背景

オゴデイ・ウルスが成立したのは、モンゴル帝国の創設からわずか数年後、1207年から1211年の間です。チンギス・カンは、彼の息子たちにそれぞれ兵力と領地を分配し、オゴデイには4つの千人隊が与えられました。このことがオゴデイ・ウルスの発端となります。最初の領土は、アルタイ山脈の中部に広がる地域で、これには中央アジアの重要な交易路が含まれていました。

1219年には、中央アジア遠征が始まり、オゴデイは新的な領土を拡大しました。オゴデイの治世下においては、彼の夏営地や冬営地が決定され、軍事的・経済的な基盤が固められていきました。彼の治世の間には、金朝や西夏に対する遠征も行われ、その功績として新たに西京路や涼州が領土として与えられました。

オゴデイ家内の政争

オゴデイの死後、彼の家族やトルイ家との間に激しい権力争いが起きます。特に、トルイ家はオゴデイの後継者としてモンケを推す一方で、オゴデイ家はグユクを後継者に立てようとしていました。結果的に、トルイ家とオゴデイ家の対立が激化し、内乱が続くことになりました。

1246年、クリルタイにおいてグユクがカアン位に即位しましたが、彼の治世は安定を欠き、1251年にはモンケがカアンに選出されました。モンケはオゴデイ・ウルスに対して権力を強化し、オゴデイ家の影響力を削ぎました。この過程で、オゴデイ・ウルスは内部の派閥や権力闘争によって徐々に弱体化していきました。

オゴデイ・ウルスの解体とその後

モンケ・カアンの死後、オゴデイ・ウルスはその分割が進みました。オゴデイ家の諸子の領土はそれぞれ独立したウルスへと分立し、この過程で政治的な緊張が高まりました。この内部分裂が続く中で、カイドゥの乱が勃発し、オゴデイ・ウルスの一部は再びまとめられることになりました。

最終的に、1306年には大元ウルスによる一連の征伐により、オゴデイ・ウルスは事実上解体されました。オゴデイ家の末裔は形式上は存続し続けましたが、その影響力は失われ、遊牧生活を続けながら生き残ることになります。

今日の研究においては、オゴデイ・ウルスの歴史は当時のモンゴル帝国全体を理解する上で重要な役割を果たしています。その複雑な権力構造と変遷は、新たな視点を提供しており、モンゴル史の全体像を考える際に欠かせない要素となっています。

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