オジャンタ・ウマラ

オジャンタ・ウマラ：ペルーの元大統領、その軌跡と評価

オジャンタ・モイセス・ウマラ・タッソ（Ollanta Moisés Humala Tasso）は、1962年6月26日生まれのペルーの政治家、元陸軍軍人です。第94代ペルー共和国大統領として、その政治手腕と政策は国内外で様々な評価を受けています。

生い立ちと軍歴

リマで生まれたウマラは、弁護士で共産党員の父を持ち、インディヘナの民族主義運動にも影響を受けました。「オジャンタ」という名前はケチュア語で「すべてを見通す兵士」を意味し、彼の先住民としての出自への誇りを示しています。日系ペルー人が設立した私立学校ラ・ウニオン校で教育を受け、多少の日本語を理解するとも言われています。

1982年にペルー国軍に入隊し、チョリジョ士官学校で学びました。軍人として22年間勤務し、センデロ・ルミノソ掃討作戦やエクアドルとのセネパ戦争に従軍。2000年には、フジモリ大統領の側近による汚職事件をきっかけに、反乱を起こし注目を集めました。反乱は鎮圧され逮捕されましたが、後に恩赦で軍に復帰。フランスや韓国での駐在武官を経て、2004年に軍を退役しました。

アンダワイラス事件と軍内部での政治活動

2005年、弟のアンタウロ・ウマラが率いる元軍人らがアンダワイラスで反乱を起こし、ウマラも支持を表明しました。この事件は鎮圧され、アンタウロは逮捕されました。ウマラは1988年に弟とともに軍内に「ペルー・ナショナリスト運動」を結成。反米と自主独立を掲げ、外国資本の国有化を主張しました。

政界入りと大統領選挙

2005年、ペルー民族主義党を結成し、2006年の大統領選挙に出馬。貧困解消と雇用創出を公約に掲げ、支持を拡大しました。急進左派的な政策や資源ナショナリズム的な主張は、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領ら南米の左派指導者との類似性を指摘されました。第一回投票で1位となったものの、決選投票でアラン・ガルシアに敗北しました。

2011年の大統領選挙では、公約を中道寄りに修正し、政治腐敗の一掃、教育の無料化、憲法改正を訴えました。再び第一回投票で1位となり、決選投票で勝利。ペルー大統領に就任しました。

大統領在任中の政策と退任後

2011年7月28日、第94代ペルー大統領に就任。就任式では1979年憲法の精神を尊重すると宣言し、左派への回帰を示唆しました。貧困対策として、最低賃金の引き上げや高齢者への年金支給などを実施。一方で、鉱山開発会社などへの増税による富の再分配を目指しました。自由市場経済モデルを堅持し、アメリカ合衆国との自由貿易協定を維持するなど、富裕層の懸念にも配慮しました。

2016年7月28日に大統領を退任。2017年、ブラジルの建設会社オデブレヒトによる汚職事件に関連する資金洗浄の容疑で逮捕されました。2019年には、マネーロンダリングの罪で起訴されています。

人物像

妻ナディン・エレディアとの間に3人の子供がいます。妻によれば「愛妻家」であり、趣味はチェス、読書、旅行、そして故郷の民謡鑑賞です。

オジャンタ・ウマラは、その複雑な経歴と政治思想から、ペルー国内外で様々な評価を受ける人物です。元軍人から政治家へ、そして大統領としてペルーを率いた彼の足跡は、ペルー現代史において重要な位置を占めています。

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