オスカー・フィッシンガー

オスカー・フィッシンガー：抽象アニメーションの先駆者

オスカー・ヴィルヘルム・フィッシンガー（1900年6月22日 - 1967年1月31日）は、20世紀の映像芸術に革新をもたらしたドイツ系アメリカ人のアニメーター、映画製作者、そして画家です。彼は、CGアニメーションが登場する以前から、音楽と抽象的なイメージを融合させた革新的なアニメーション作品を制作し、その分野の先駆者として知られています。

生涯と初期のキャリア

フランクフルト近郊のゲルンハウゼンで生まれたフィッシンガーは、幼い頃から芸術への関心を示しました。第一次世界大戦後、フランクフルトに移り住み、エンジニアとしての資格を取得。その後、演劇評論家や抽象映画の先駆者との出会いをきっかけに、映像制作の世界に足を踏み入れます。

初期の実験では、着色されたワックスや粘土などの素材を使用し、独自の「ワックススライスマシン」を発明。この機械を用いて、抽象的なイメージをアニメーションとして表現する試みを行いました。ミュンヘン時代には、ロッテ・ライニガーの作品の背景制作にも携わっています。

1920年代には、複数の映写機を使用したパフォーマンスや、音楽と映像を組み合わせた実験的な作品を制作。経済的な困難に見舞われながらも、ベルリンへと拠点を移し、新たな活動を始めます。

ベルリン時代

ベルリンでは、映画の特殊効果開発に取り組みながら、木炭紙を用いたアニメーション実験を継続。ポピュラー音楽やクラシック音楽と映像を組み合わせた作品は、レコードレーベルとの連携によって、初期のミュージックビデオのような形で劇場で上映され、高い評価を得ました。

しかし、1930年代に入ると、ナチスの台頭により、抽象芸術への風当たりが強まります。それでも、フィッシンガーは商業映画や広告制作を続けながら、独自の芸術表現を追求しました。

ハリウッドでの挑戦

1936年、フィッシンガーはハリウッドに渡り、パラマウント映画で働く機会を得ます。しかし、スタジオとの意見の相違から契約を解除。その後、MGMやディズニーでの制作に参加しますが、制作システムや表現の自由を巡る問題から、満足のいく作品を生み出すことができませんでした。

それでも、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館の支援を受け、バッハの音楽をテーマにした『Motion Painting No. 1』（1947年）を制作。この作品は、ブリュッセル国際実験映画祭でグランプリを受賞するなど、高い評価を受けました。

晩年と遺産

映画制作に不満を抱いたフィッシンガーは、晩年、油絵制作に注力。1967年にロサンゼルスで亡くなりました。

オスカー・フィッシンガーの作品は、抽象アニメーションの先駆的な試みとして、今日でも高く評価されています。彼の実験精神と芸術への情熱は、後世のアーティストたちに大きな影響を与え続けています。彼の作品は世界中の美術館やコレクションで所蔵されており、その革新的な映像表現は、時代を超えて観る者を魅了し続けています。

彼の代表作である『Motion Painting No. 1』は、アメリカ議会図書館のアメリカ国立フィルム登録簿に登録されており、アメリカの文化遺産としても保護されています。

主要作品

習作シリーズ（Studien, 1927-1932）
光の詩（An Optical Poem, 1937）
* Motion Painting No. 1 (1947)

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