オスマン帝国の対プロテスタント政策

オスマン帝国とプロテスタントの関係

オスマン帝国は、16世紀以降、南ヨーロッパにおいて勢力を強め、同時に北ヨーロッパでのプロテスタント運動の発展を背景に、プロテスタント国家との関係を模索しました。この時期、カトリックである神聖ローマ帝国との対立が強調される中で、イスラム教とプロテスタントの間には意外な共通点が見出され、商業や軍事的な協力が進むこととなります。

歴史的背景

オスマン帝国は、メフメト2世のコンスタンティノープル攻略やセリム1世による中東の統一を経て、スレイマン大帝のもとで領土を拡大していました。その結果、ハプスブルク帝国との対立が激化し、北ヨーロッパで進行中のプロテスタントの宗教改革とも影響を与え合う関係にありました。プロテスタント勢力は、共通の敵であるハプスブルク家と戦うため、オスマン帝国との関係の強化を考慮するようになりました。

初期の宗教的和解

プロテスタントの宗教改革が進むにつれ、オスマン帝国はプロテスタントをカトリックよりも近い存在だと認識し、相互の寛容な態度が育まれました。著名な歴史家Jack Goodyは、プロテスタントとイスラムの教義にはカトリックに比べて共通点が多いと指摘しています。特に、偶像崇拝の否定や結婚を秘蹟として扱わない点などが挙げられます。

オスマン帝国のスルタンは、キリスト教徒やユダヤ教徒に対して寛容であったため、多くの宗教的亡命者が帝国内で自由に生活し、信仰を守ることができました。このため、プロテスタント勢力はスルタンの太守に支援を受けることを期待し、宗教的・軍事的な盟約を結ぶ可能性も探っていました。

軍事的。そして経済的連携

1535年には、フランスとの軍事同盟が結ばれるなど、オスマン帝国はヨーロッパの他のプロテスタント勢力と連携を深めていきます。これは、フランス王国がオスマン帝国との連携を通じて、強大なハプスブルク帝国からの防衛力を高める戦略の一環でした。これに続き、スレイマン大帝はルター派のフランドルへの手紙の中で、軍事支援を申し出るなど、プロテスタント国家との直接的な連絡を取るようになります。

プロテスタントの国々に対する支援は、オスマン帝国にとって単なる宗教的意義を超え、戦略的な外交関係を構築し、カトリック勢力に対抗するための強力な手段でもありました。特に、プロテスタントのカルヴァン派に対する支援は、オスマン帝国の対ハプスブルク戦略において重要な役割を果たしていました。

オランダの独立戦争とイスラム

オランダのプロテスタントは、カトリックのみならずムスリムに対しても反発を抱く一方で、特定の状況下では共闘の可能性を探ることもありました。オランダ独立戦争の際、オスマン帝国からの支援を求める動きがあり、ウィレム1世がスルタンに援助を求めたことも知られています。

比較と共通点

オスマン帝国とプロテスタントの間には、教義上の違いや対立が存在するものの、偶像崇拝の禁止や原理主義に至るまでの共通点も見られました。このように、プロテスタントとイスラムの両者が持つ宗教的な態度は、近代においても興味深い研究対象となっています。

今後の研究においては、両者の関係性に関する新たな解釈や視点が求められることでしょう。

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