オゼッラ・FA1E

オゼッラ・FA1E：アルファロメオエンジン搭載の苦闘マシン

1983年のF1世界選手権を舞台に、オゼッラ・スクアドラ・コルセから参戦したオゼッラ・FA1Eは、多くの困難に直面したマシンとして知られています。本記事では、その開発背景からレースでの成績、そして技術的な詳細まで、FA1Eの全貌に迫ります。

開発の背景：ターボ時代への過渡期

当時、F1はターボエンジンの時代へと移り変わろうとしていました。フェラーリ、ホンダ、TAG-ポルシェといった強豪チームがターボエンジンを投入し、従来のコスワースDFVエンジンは競争力を失いつつありました。コスワースは新型DFYエンジンを開発していましたが、出力向上はわずか20～30馬力にとどまり、しかも一部のチームのみに供給される状況でした。オゼッラは供給対象外だったため、アルファロメオから旧式の自然吸気エンジンである3リッターV型12気筒のティーポ1260の供給を受け、FA1Eの開発に至ります。ターボエンジン搭載のFA1F投入までの繋ぎとしての役割を担った、いわば過渡的なモデルだったのです。

技術的詳細：アルファロメオエンジンの搭載と既存シャーシの流用

FA1Eの設計は、前モデルであるFA1Dをベースに、エンジンをアルファロメオのティーポ1260に変更した点が最大の特徴です。シャーシやサスペンション、ボディパーツの大部分はFA1Dと共通で、トニー・サウスゲートが改修を担当しました。

ティーポ1260は、1979年からアルファロメオのワークスチームが使用していたエンジンですが、1983年にはワークスチームがターボエンジンへ移行したため、オゼッラは旧エンジンを譲り受けた形となります。このエンジンは、出力こそDFYと同等でしたが、重量が重く、燃費も悪かったため、パフォーマンス上のメリットは少なかったと言えます。何より、信頼性に欠ける点が大きな問題でした。

FA1Eは3台が製造されました。1号車はFA1Dを改造したもので、新しいエンジンを搭載し、その他部分の調整が行われました。残りの2台は新造されたもので、1号車とは細部の仕様が異なっています。

レース戦績：完走はわずか3回

1983年シーズン、FA1Eはピエルカルロ・ギンザーニとコラード・ファビの両ドライバーがドライブしました。しかし、その成績は低迷を極めました。予選落ちも多く、完走できたのはわずか3回のみで、いずれもポイント圏外でした。最高成績はファビがオーストリアGPで記録した10位です。エンジントラブルが多くのリタイアの原因となり、ATSのデザイン主任だったグスタフ・ブルナーはFA1Eを「1983年シーズン最悪の車」と酷評するほどでした。

1984年には、サンマリノGPでヨー・ガルトナーがFA1Eをドライブしましたが、トランスミッショントラブルによりリタイアしています。このレースを最後にFA1EはF1の舞台から姿を消しました。

まとめ：時代に取り残されたマシン

オゼッラ・FA1Eは、ターボ時代への過渡期に開発された、いわば時代に取り残されたマシンでした。アルファロメオ製エンジンの信頼性問題と、旧式の自然吸気エンジンが抱える性能上の限界が、その低迷した成績の要因と言えるでしょう。FA1Eの苦戦は、F1における技術革新の激しさ、そして時代の流れの速さを象徴するエピソードと言えるかもしれません。

参考文献

Adriano Cimarosti: Das Jahrhundert des Rennsports. Autos, Strecken und Piloten. Motorbuch-Verlag, Stuttgart 1997, ISBN 3-613-01848-9.
David Hodges: Rennwagen von A–Z nach 1945. Motorbuch-Verlag, Stuttgart 1994, ISBN 3-613-01477-7.
David Hodges: A–Z of Grand Prix Cars. Crowood Press, Marlborough 2001, ISBN 1-86126-339-2.
Pierre Ménard: La Grande Encyclopédie de la Formule 1. 2. Auflage. Chronosports, St. Sulpice 2000, ISBN 2-940125-45-7.

もう一度検索