オッタル

オッタルは、北欧神話において愛の女神フレイヤに愛された人間の男性です。彼の父はインステイン、母はフレーディースという名前で、『古エッダ』の詩『ヒュンドラの歌』に登場します。

『ヒュンドラの歌』の中で、オッタルは「愚かなオッタル」と繰り返し呼ばれています。彼はアンガンチュールという人物と、先祖の名前を暗唱する勝負をすることになり、黄金を賭けました。勝利のため、フレイヤに助けを求めます。

フレイヤはオッタルを猪に変身させ、共にヒュンドラの住む岩穴へと向かいます。そこでフレイヤはヒュンドラに対し、オッタルの家系を語るように求めます。しかし、ヒュンドラは機嫌を損ねてしまい、「記憶の麦酒」をオッタルに与えようとしません。フレイヤがヒュンドラを脅すと、ヒュンドラはオッタルに呪いをかけようとします。それに対し、フレイヤはオッタルのために神々の加護を願います。

物語におけるオッタルの役割は、フレイヤの力を示すための触媒としての側面が強いと言えるでしょう。フレイヤの愛情と魔力、そして神としての力強さが、オッタルの物語を通して際立って描かれています。

また、『古エッダ』の『レギンの歌』には、オト(Ótr)という名前のドワーフが登場します。このドワーフはカワウソに変身していましたが、ロキによって殺されてしまいます。ロキは、オトの遺族から、その代償として黄金を要求されます。この「オト」も日本語訳では「オッタル」と表記されることがあるため、混同しないように注意が必要です。

このように、北欧神話には複数の「オッタル」が存在し、それぞれ異なる物語を持っています。フレイヤに愛された人間のオッタルと、カワウソに変身したドワーフのオト。これらの違いを理解することで、北欧神話の世界をより深く知ることができるでしょう。

参考文献：
V.G.ネッケル他編 『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。

関連項目：
ヒュンドラの歌
* フレイヤ

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