オテル・ド・摩耶

オテル・ド・摩耶：摩耶山の絶景と記憶

兵庫県神戸市灘区、摩耶山山頂に佇んでいたオーベルジュスタイルの国民宿舎「オテル・ド・摩耶」。2021年3月31日、惜しまれつつもその営業を終えました。本稿では、開業から閉館までの歴史、魅力、そして現在の状況について詳細に解説します。

開業から閉館まで：摩耶山の歴史を刻んだ宿

オテル・ド・摩耶の前身は、1970年4月に開業した「摩耶ロッジ（神戸市立国民宿舎神戸摩耶ロッジ）」です。その場所は、かつて1954年7月に開業した「ホテル奥摩耶山荘」があった場所でもありました。しかし、1968年11月に営業休止、建物撤去を経て、新たな施設として摩耶ロッジが誕生しました。

1995年の阪神・淡路大震災による被災で一時休館となった後、六甲摩耶活性化研究会の報告に基づき、日本で最初のPFI法事業として全面改築。2001年7月、国民宿舎「オテル・ド・摩耶」としてグランドオープンを迎えました。バストイレ付きのツイン洋室を中心に、水着着用で露天ジャグジーとサウナを楽しめるオーベルジュスタイルが特徴で、多くの観光客を魅了しました。

2008年には、神戸北野の北野工房のまちにレストラン ドルチェの専門店「Pasticceria オテル・ド・摩耶 北野工房店」をオープン。「オテル・ド・摩耶プリン ブディーノ」などの人気商品を提供し、ホテルの魅力をさらに広めました。

しかし、2021年2月、神戸市議会で国民宿舎の設置条例廃止議案が可決。ホテル誘致などの動きもありましたが、PFI事業期間の満了に伴い、2021年3月31日をもって営業を終了しました。現在、建物は残存しており、六甲全山縦走路が敷地内を通っているため、玄関前までは立ち入ることが可能です。

アクセスと周辺観光地：便利なロケーション

オテル・ド・摩耶は、交通アクセスも良好でした。JR三宮駅、JR六甲道駅、阪急六甲駅から神戸市バス18系統を利用、またはJR六甲道駅から神戸市バス18系統・摩耶ケーブル・摩耶ロープウェーと乗り継いでアクセス可能。阪急王子公園駅から摩耶ケーブル下駅までは徒歩20分でした。

また、掬星台、摩耶自然観察園、六甲山牧場といった近隣観光地へのアクセスも容易で、さらに足を延ばせば、再度山ドライブウェイを利用して再度公園、ヴィーナスブリッジ、神戸市内中心部へも容易にアクセスすることができました。

摩耶山の眺望：大阪方面のパノラマ

オテル・ド・摩耶は、摩耶山の尾根上に位置し、大阪方面の眺望が魅力でした。ただし、山々に多少遮られるため、ダイナミックな景色とは言い難い面もありましたが、それでも神戸の街並みや大阪湾の景色を望むことができました。

館内設備：快適な滞在を提供

館内には、イタリア料理レストラン「エルベッタ」、会議室、大浴場、サウナ、露天風呂といった充実した設備が整っており、快適な滞在を提供していました。

閉館後の現状と未来：新たな可能性

2022年8月現在、オテル・ド・摩耶の建物はそのまま残っています。敷地内を六甲全山縦走路が通っており、玄関前までは自由に立ち入ることが可能です。将来、この場所にどのような施設が誕生するのか、あるいはどのような形で活用されるのか、今後の展開が注目されます。

まとめ：記憶に残る国民宿舎

オテル・ド・摩耶は、PFI法事業として建設され、多くの観光客に思い出深い時間を提供した国民宿舎でした。その歴史、魅力、そして閉館後の現状を知ることで、摩耶山の魅力をより深く理解し、この場所が持つ潜在的な可能性を感じ取ることができるでしょう。閉館は寂しい出来事ですが、オテル・ド・摩耶が刻んだ歴史は、摩耶山の記憶としてこれからも語り継がれていくことでしょう。

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