オディオス

オディオス（Odius）

古代ギリシア神話に登場するオディオスという名の人物は複数存在するが、特にトロイア戦争に関連する二人の人物が知られている。

ハリゾネス人の武将オディオス

一人は、アナトリア地方北部に住むハリゾネス人の武将である。アリュベーの支配者であるメーキステウスの子とされ、エピストロポスという名の兄弟がいた。また、別の伝承ではミヌオスの息子とも伝えられている。彼は兄弟のエピストロポスと共に、ハリゾネスの兵士たちを率いて、ギリシア勢に対するトロイアの救援に駆けつけ、戦闘に参加した。

ホメーロスがその著書『イーリアス』の中で描くオディオスは、際立って大きな体格を持つ戦士であった。物語の第五巻には彼の最期が記されている。戦の神アレースはトロイア軍を支持していたが、知恵の女神アテーナーによって戦場から引き離されると、トロイア勢はギリシア軍の猛攻の前に動揺し、陣形が乱れ始めた。この混乱の中、ハリゾネス人のオディオスは事態をいち早く察知し、自身の戦車を駆って戦場からの脱出を図った。しかし、ギリシア軍の総司令官でありミュケーナイの王である勇将アガメムノーンに見つかってしまう。アガメムノーンは逃走するオディオスの背後から正確に槍を投擲し、彼の背中を貫いた。槍は胸まで達し、オディオスはそのまま戦車から落ちて息絶えた。勇敢な戦士でありながら、戦場からの撤退中に不意を突かれて討ち取られるという劇的な最期であった。

ギリシア人の武将オディオス

もう一人のオディオスは、トロイア戦争におけるギリシア連合軍の一員として名を連ねる武将である。彼は、トロイア軍との長期にわたる戦いの最中、ギリシア軍で最も強力な戦士であったアキレウスが総司令官アガメムノーンとの確執から戦線を離脱した際に、アガメムノーンがアキレウスとの和解を試みて派遣した使節団の一員として登場する。

この重要な使命を帯びた使節団には、経験豊富な老将ポイニクス、屈強な戦士である大アイアース、そして策略に長けた英雄オデュッセウスといったギリシア軍の主要人物たちが選ばれていた。オディオスは、彼らに続いて、伝令役のエウリュバテースと共に使者の一団に加えられた。彼の具体的な役割や活躍については詳細には語られていないが、ギリシア軍の重要な局面において、信頼される武将の一人として使節団に選ばれたことから、一定の地位や評価を得ていた人物であったと推測される。

これら二人のオディオスは、それぞれ異なる立場でトロイア戦争という壮大な物語に関わっており、特にハリゾネス人の武将オディオスはホメーロスによってその最期が鮮烈に描写されている。彼らの存在は、神話時代の英雄たちの多様な運命を示す一例と言えるだろう。

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