オトラント (仮装巡洋艦)

オトラントの歴史

「オトラント」は、第一次世界大戦において重要な役割を果たしたイギリスの客船である。その歴史は、平和な航海から戦争の激しい波に飲み込まれ、最終的には悲劇的な沈没へとつながる。

客船時代

オトラントは、総トン数12,124トンの中型客船であり、オリエント汽船会社により運航されていた。この船はイギリスとオーストラリアをパナマ運河経由で結ぶ定期航路に就航しており、多くの旅行者に利用されていた。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発すると、状況は一変する。

仮装巡洋艦としての役割

オトラントは、戦争勃発後、オリエント汽船が所有する他の客船と共に徴用され、仮装巡洋艦に改装された。イギリス海軍は、大型客船を仮装巡洋艦として使用することが適切でないと判断し、中型客船であるオトラントをその任務に充てることに決定した。1914年にはクリストファー・クラドック少将の戦隊に配属され、南米沖で敵艦隊に対する迎撃任務を遂行した。

しかし、1914年11月1日のコロネル沖海戦でクラドック戦隊は大きな損失を被る。オトラントは戦闘には参加せずに生き延びたものの、その後は南米沖で通商保護の役割を担い続けることとなった。

軍隊輸送船としての転用

戦争の末期、オトラントは軍隊輸送船として再び任務を与えられ、1918年にはアメリカのニューヨークからイギリスのリヴァプールへ向かう護送船団HX50に参加することになった。この船団は、アメリカ陸軍の兵士5000人を輸送するために編成され、オトラントには689人の兵士が乗船していた。

しかし、船団はアイリッシュ海に接近する2日前から濃霧に包まれ、視界が極端に悪化した。視認できないまま航行していたオトラントは、船団の司令官が判断を誤った結果、他の輸送船と衝突してしまう。この衝突により、オトラントは簡単に二つに分断され、8分以内に沈没してしまった。

沈没の悲劇

この衝突事故は、被害者431名を出すという惨事を引き起こした。乗員と乗船将兵のほとんどが失われ、連合国側の海難事故において、第一次世界大戦および第二次世界大戦を通じて最大級の海難事故として知られることとなった。また、駆逐艦の救助活動が行われたものの、沈没の衝撃と厳しい条件の中では多くの命が失われた。

オトラントは、戦時の混乱に巻き込まれながらも、国のために尽力した船であった。その沈没は、時代の流れの中で消えていった一つの悲劇的な物語である。

まとめ

「オトラント」の物語は、平和な時代から戦争による悲劇への移行を示すものであり、戦争がもたらす犠牲の重さを忘れてはならない。 その後2代目の同名のオトラントが建造されたが、最初のオトラントが耐えた歴史は、今もなお人々に語り継がれている。

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