オナガザル亜科

オナガザル亜科（Cercopithecinae）

オナガザル亜科は、霊長目オナガザル科に属する哺乳類の一群です。この亜科には、体格、生態、行動などにおいて非常に多様な特徴を持つ多くの種が含まれています。

分布

本亜科のサルは、大部分の属がアフリカ大陸に広く分布しています。例外はマカク属（Macaca）で、アフリカ北西部のバーバリーマカクを除き、ユーラシア大陸の広範囲に生息しています。このため、オナガザル亜科はアフリカとアジアという、旧世界の広大な地域にまたがって分布しています。

形態

生息環境への適応は、オナガザル亜科の形態に顕著な多様性をもたらしています。例えば尾の長さは、樹上での生活でバランスを保つのに役立つ長い尾を持つ種がいる一方で、地上性の種では尾が短いか、あるいは完全に欠けているものもいます。寒冷地に適応したニホンザルやチベットモンキーでは、尾が短い傾向が見られます。また、一部の地上性の強い種では、尾がバランス維持だけでなく、コミュニケーション手段としても機能することが知られています。

頭部は多くの種で前後に長い形状をしており、特にヒヒ類においてこの特徴が顕著です。彼らは大臼歯の外側に頬袋と呼ばれる器官を持ち、ここに食物を一時的に溜めることができます。これは採食した場所から安全な場所へ移動してから食べることを可能にし、食物を巡る競争において有利に働くと考えられています。

四肢の長さも環境に適応しています。樹上を主とする種は比較的短い前肢を持つ傾向がありますが、地上での活動が多いヒヒ類などでは前肢や手の平が長く、静止時には肩の位置が臀部よりも高くなります。全ての種が、他の指と向かい合った第1指（親指）を持っており、これによって物をつかんだり、樹上を効率的に移動したりする能力に長けています。

オスの体毛は、一部の種で肩や首の周りにマントやたてがみのような長い毛が見られます。犬歯はオスで非常に長く発達する種が多いですが、グエノン類の中にはメスでも犬歯がよく発達する種がいます。繁殖に関連する特徴として、ヒヒ類、マカク類、マンガベイ類、グエノン類の一部では、メスが月経周期の特定の時期（主に前半）に性皮を大きく腫れ上がらせる現象が見られます。

全体的な体つきも異なり、樹上性の種は華奢で細身ですが、地上性の種はがっしりとした体格をしています。多くの種に臀部に尻だこがあり、繁殖期にはその色が鮮やかに変化することがあります。

生態

オナガザル亜科のサルは全て昼行性で、社会的な集団を形成して生活しています。一般的には母系集団を形成し、オスは成熟すると生まれた群れを離れて分散します。ただし、マントヒヒのようにオスが中心となる父系集団を形成する珍しい例も存在します。

生息環境は極めて多様です。熱帯雨林の内部、疎林、河辺林、サバンナ、乾燥した岩場など様々な場所に適応し、ニホンザルのように雪の積もる山地にも生息する種もいます。移動様式は環境に依存し、地上ではかかとをしっかりとつけて歩く踵行性を示しますが、樹上を移動する種は前肢の付け根も接地して移動することがあります。

食性は広範な雑食性です。果実を中心に、植物の葉、芽、種子、根、樹皮、樹液、さらには昆虫、クモ、カタツムリ、魚類、爬虫類、小型の哺乳類、鳥類の卵や雛まで、幅広い餌を利用します。大型のヒヒ類などは、レイヨウの幼獣やノウサギ、さらには同じ亜科の小型サルを狩ることもあります。食物を前肢で掴んで巧みに扱います。

繁殖は通常、約5～6ヶ月の妊娠期間を経て1頭の幼獣を出産します。幼獣は生後3ヶ月から1年程度で離乳し、完全に成熟するまでには3年から5年を要します。寿命は種によって大きく異なり、飼育下では50年近く生きる記録がありますが、野生での平均寿命はベルベットモンキーでおよそ10年程度と報告されています。

分類

オナガザル亜科は、大きく分けてオナガザル族（Cercopithecini）とヒヒ族（Papionini）の二つの族に分類されます。オナガザル族にはオナガザル属やサバンナモンキー属などが含まれ、比較的小型で樹上生活の比重が大きい傾向があります。一方、ヒヒ族にはヒヒ属、マカク属、マンガベイ属、マンドリル属などが含まれ、より大型で地上生活に適応した種が多い傾向が見られます。特にマカク属は非常に多くの種を含み、広範な地域と多様な環境に生息しています。これらの族の下に、多数の属と種が分類されています。

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