オビカレハ

オビカレハ（帯枯葉）について

オビカレハ（学名：Malacosoma neustria）は、チョウ目に属するカレハガ科の昆虫です。日本国内では北海道から屋久島にかけて広く分布しており、市街地や庭木、果樹園など、私たちの身近な場所でしばしばその姿を見ることができます。

特に幼虫の段階でよく知られており、特定の樹木を食害することから「梅毛虫」、また糸を張って大きな巣を作り、その中で集団生活を送る様子から「天幕毛虫」とも呼ばれます。これらの別名は、幼虫の生態を端的に表しています。

幼虫の特徴

オビカレハの幼虫は、多くの人が「毛虫」と聞いて連想する姿の一つかもしれません。体色は水色を基調とし、背中に沿って鮮やかなオレンジ色の帯が三本走っています。全身には白く長い毛が生えており、この毛が特徴的です。サクラやウメなどの樹木で、葉を食べている様子が観察できます。

多くの毛虫に対して「毒があるのではないか」という心配を抱く方もいるかと思いますが、オビカレハの幼虫は毒を持ちません。見た目とは異なり、触れても人体に害はありません。ただし、同じカレハガ科の仲間であるマツカレハなど、近縁種には毒を持つものが存在するため、区別には注意が必要です。

成虫の特徴

オビカレハの成虫は、幼虫に比べて人目に触れる機会は少ないかもしれません。全体的に茶褐色をした比較的小型のガです。外見はドクガの仲間に似ていると表現されることもありますが、オビカレハは一生を通じて毒を持たないという点でドクガ類とは異なります。

成虫には雌雄でわずかな外見の違いが見られます。特に前翅にはっきりとした特徴があり、メスでは前翅を横切るように濃い茶色の帯が目立ちますが、オスではその帯の輪郭がぼんやりとしているか、不明瞭な場合が多いです。

生態と生活史

オビカレハは通常、年に一度の世代交代を行います（年1化）。その一生は、卵、幼虫、蛹、成虫という四つの段階を経て進みます。

生活サイクルは秋に始まります。メスの成虫は木の枝に帯状に卵を産み付け、この卵の状態で冬を越します。翌年の春、暖かくなると卵から孵化します。孵化したばかりの幼虫は茶色っぽい色をしており、卵塊の周辺に集まって暮らします。彼らは自分たちの周りに糸を張って「巣」のようなものを作り、その中で一緒に餌を食べ、休みます。これは「天幕毛虫」と呼ばれる所以です。

集団で生活しながら成長し、餌である葉が少なくなると、次の場所へ集団で移動します。しかし、幼虫が5齢（脱皮を繰り返して成長する段階）になると、集団から離れて単独で行動するようになります。単独になった幼虫は餌を十分に食べた後、葉の間に黄色い粉をまとった繭を作り、その中で蛹になります。蛹の期間を経て、夏頃に成虫が羽化してきます。羽化した成虫は交尾を行い、再び枝に卵を産み付けて、次の世代へと命をつなぎます。

オビカレハは一度に産み付けられる卵の数が非常に多いため、条件が揃うと大量発生することがしばしばあります。これにより、食樹とされている様々な植物に被害が出ることがあります。

食性

オビカレハの幼虫は非常に幅広い食性を持っています。特にサクラやウメ、モモ、リンゴ、ナシ、カキといったバラ科やカキ科の果樹・花木、またバラなどの園芸植物を好んで食べます。その他にもウツギ、コナラ、ヤナギ、ササなど、多くの種類の樹木や草本を食樹とします。この幅広い食性が、様々な環境での生息と大量発生を可能にしている要因の一つと考えられます。

オビカレハは、見た目こそ他の毛虫と同様に警戒されがちですが、毒がなく身近な場所で見られるガです。その独特な集団生活や幅広い食性は、昆虫の生態を観察する上で興味深い対象と言えるでしょう。

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