オブラート

オブラートとは

オブラート（オランダ語: oblaat）は、元々はキリスト教のミサで使用される、丸くて軽いウエハースのような聖餅（硬質オブラート）を指していました。しかし、日本では一般的に、デンプンから作られる水に溶けやすい可食フィルム（軟質オブラート）のことを指します。この軟質オブラートは、日本で明治時代に独自に発明されたもので、英語ではedible paperと呼ばれています。

硬質オブラート

硬質オブラートは、キリスト教のミサで使用される聖餅に似た、丸くて軽いせんべいのようなものでした。古くから薬の服用にも使用され、水に浸して柔らかくしてから粉薬を包んで飲み込む方法がとられていました。「せんべいオブラート」とも呼ばれますが、正確な使用開始年代は不明です。

軟質オブラートの歴史

明治時代に日本に伝わった硬質オブラートは輸入品で高価であり、柔らかくなるまでに時間がかかるという欠点がありました。1902年（明治35年）、三重県に住んでいた医師の小林政太郎が、柔らかい「小林柔軟オブラート」を開発しました。彼は合名会社小林柔軟オブラード製造所を設立し、柔軟オブラートの製造を開始。日英米独仏の5ヶ国で特許を取得し、1904年のセントルイス万国博覧会で銅牌、1910年の日英博覧会で金牌を受賞しました。

1913年には自動汽力製造装置を完成させ、大量生産を可能にしました。1914年には、鈴木菊次郎によってオブラートで包んだ菓子が発売されました。初期の柔軟オブラートには柔軟剤として寒天が添加されていましたが、1922年には乾燥機を用いた製法が開発され、柔軟剤が不要となり、さらなる大量生産が可能になりました。

1920年代には複数の製造会社による競争が激化しましたが、1935年頃には小林柔軟オブラード製造所も閉鎖されました。内服薬の製薬技術が進歩し、顆粒剤や錠剤、カプセル剤が普及したことで、医薬品の内服用途でのオブラートの使用は減少傾向にあります。また、菓子包装用のオブラートも、包装技術の進歩により使用が減っています。かつて100カ所以上あったオブラート工場も、2000年代には5カ所まで減少しました。

製品

オブラートは、デンプンを糊状にしたものを急速乾燥させて作られます。原料には、ジャガイモなどのデンプンが使用されます。水分を10〜15%程度まで急速に乾燥させることで、デンプンが老化せず、糊状の状態が保たれます。

菓子用オブラートの厚さは40μm、薬用オブラートの厚さは20μmです。また、ゼリー菓子の固着防止や、砂糖を使わない菓子の打ち粉として、粉末オブラートも使用されています。

用途

医薬品の内服

苦味のある薬や散剤など、そのままでは飲みにくい薬を内服する際にオブラートが用いられます。オブラートを広げて薬を包み、端に少量の水をつけて閉じると、中身がこぼれにくくなります。口の中に張り付きやすいため、コップ1杯程度の水またはぬるま湯で服用することが推奨されます。ただし、一部の薬（苦味健胃薬や消化薬など）は、オブラートに包んで飲むと効果が弱まるため注意が必要です。

市販されているオブラートには、円形、三角形、袋状など様々な形状があり、イチゴ味などのフレーバー付き製品や、ゼリー状やペースト状の薬用オブラートも開発されています。

菓子包装

求肥や餅、寒天、ゼリーなどを使用した菓子がべたつかないように、オブラートで包装します。オブラートで包装された菓子としては、以下のようなものが知られています。

ボンタンアメ・兵六餅（セイカ食品）
みすず飴
昆布飴
日本一きびだんご
よいとまけ - オブラートで巻いてあるロールケーキの一種

食材

スペインのレストラン「アスルメンディ」では、オブラートを使用した料理が提供されています。

慣用句

オブラートに包む：相手を刺激しないように、直接的な表現を避け、婉曲に表現すること。
オブラート演説：他人の話をそのまま受け入れて、自分の意見のように話すこと。

脚注

関連項目

山下太郎 - アラビア石油創始者。若き頃に山元オブラート株式会社を設立。
オブラートメーカー
現存
伊井化学工業：日本一のシェアを持つオブラート・プラスチック容器メーカー（北海道）。
山元オブラート株式会社：薄型オブラートを開発したオブラートメーカー（東京都）。菓子用オブラートでシェア7割を占める。
国光オブラート：オブラート・プラスチック容器メーカー（静岡県）。
瀧川オブラート：オブラートメーカー（愛知県）。
旭光：オブラートメーカー（愛知県）。
白十字：「FCオブラート」を販売。
廃業
新潟オブラート：オブラートメーカー（新潟県）。2020年廃業。
白百合オブラート株式会社
キリンオブラート
東京オブラート製造所
その他多数（最盛期の1950年頃には全国に100カ所以上あった）

外部リンク

* 海外でも特許取り、供給－小林政太郎の柔軟オブラート - 三重県

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