オペラファンタスティカ

オペラ・ファンタスティカ

『オペラ・ファンタスティカ』は、NHK-FMラジオで放送されている、クラシック音楽の中でも特にオペラに焦点を当てた専門番組です。2012年4月6日に放送を開始して以来、長年にわたり多くのオペラ愛好家や初心者リスナーに親しまれています。

番組概要と特色

この番組が位置するのは、NHK-FMの平日におけるクラシック番組ラインナップの中、特に毎週金曜日の時間帯です。月曜日から木曜日の帯番組『クラシックカフェ』の初回放送および再放送枠とは異なり、金曜日は『オペラ・ファンタスティカ』のために確保された、合計4時間にも及ぶ特別な長時間枠となっています。これは、一般的なクラシック番組ではなかなか実現できない、オペラという芸術形式に深く向き合うための時間設計と言えるでしょう。

番組の最も際立った特色は、この4時間という潤沢な時間を利用して、一つのオペラ作品を原則としてほぼ全編にわたって放送することです。有名なアリアや合唱曲といったハイライトだけでなく、幕間の音楽やレチタティーヴォなども含め、作品全体の流れを追体験できる構成となっています。これにより、リスナーは単なる名曲集としてではなく、物語や音楽構成全体としてのオペラの魅力をより深く理解することができます。

使用される音源は多岐にわたります。市販されている優れた録音盤、すなわちCD化された音源が用いられることもありますが、番組ではそれだけでなく、世界各国の主要な歌劇場や放送局が提供する、最新の公演録音を積極的に紹介することが大きな強みとなっています。これにより、常に世界のオペラ界の「いま」に触れる機会が提供され、鮮度の高い演奏や注目のプロダクションをタイムリーに楽しむことが可能となっています。

番組の進行において、単に音楽を流すだけでなく、リスナーの理解を助けるための丁寧な解説が加えられている点も重要です。特に、各幕の終了後などには、番組に出演する解説者が登場し、その幕で展開された物語のあらすじや、登場人物たちの心情、劇的な展開などについて分かりやすく説明します。これにより、初めて聴く作品や、ストーリーが複雑な作品であっても、物語に置いて行かれることなく、音楽と劇の両面からオペラを楽しむことができます。

また、定期的ではありませんが、季節の変わり目などに、番組の解説者全員が集結する特別企画が放送されることがあります。通称「オペファン・サミット」と呼ばれるこの企画では、普段は週替わりで一人ずつ登場する解説者たちが一堂に会し、特定のテーマについて鼎談形式で語り合ったり、リスナーからの質問に答えたりするなど、より自由で掘り下げたトークが展開されます。これは、番組を支える解説者たちの個性や、オペラに対する多様な視点に触れる貴重な機会となっています。

出演者

『オペラ・ファンタスティカ』では、週替わりでオペラ作品の解説を担当する3名の専門家が出演しています。それぞれの深い知識と独自の視点から、作品の背景、作曲家の意図、演奏の聴きどころなどを紹介し、リスナーをオペラの世界へと誘います。

- 有田栄（ありたさかえ）
- 奥田佳道（おくだよしみち）
- 室田尚子（むろたひさこ）

この3名が交代で登場し、放送されるオペラ作品の魅力を様々な角度から解き明かしています。

テーマ曲

番組の始まりと終わりを彩るテーマ音楽も、オペラの歴史に名を刻む重要な作品から選ばれています。

- オープニング・テーマ: カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲の歌劇『オイリアンテ』序曲が使用されています。ロマン派オペラの先駆とされるウェーバーの力強く華やかな序曲が、これから始まるオペラへの期待感を高めます。
- クロージング・テーマ: エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト作曲の歌劇『死の都』から、ピエロの歌「あこがれと空想はよみがえる」（Mein Sehnen, mein Wähnen）のインストゥルメンタル版が採用されています。哀愁を帯びた美しい旋律が、聴き終えたばかりのオペラの余韻を静かに締めくくります。

『オペラ・ファンタスティカ』は、長時間枠、全編放送という他に類を見ないスタイルで、オペラの深い魅力を余すところなく伝える、NHK-FMの看板クラシック番組の一つと言えるでしょう。

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