オムシャ

オムシャの概要

オムシャは、江戸時代においてアイヌ（蝦夷）に対する撫育のために設けられた措置であり、後に年中行事として定着しました。この行事は、当初は交易に訪れた客をもてなす目的で行われていました。

オムシャの名称の由来には複数の説があります。一つは、日本語の「おびしゃ（御奉射）」や「おぶしゃ（御撫謝）」が転訛したものであるという説です。また、アイヌ語において、互いの頭を撫で合う挨拶儀式「ウムシャ」が起源であるとも言われています。それに加え、松前藩とアイヌの主従関係を象徴するために「恩謝」という漢字が当てられる場合もあります。

初期のオムシャは、松前藩とアイヌとの交易において交歓の儀礼として行われていました。しかし時が経つにつれて、交易や漁労が終了した際の慰労行事に変化し、さらには蝦夷地の統治を目的とした手段としても利用されるようになりました。オムシャを執行する役割は元々商人が担っていましたが、後には松前藩や江戸幕府の役人がその任にあたるようになりました。

この儀式は通常、漁を休む時期である7月から9月の間に毎年行われました。ただし、事情により臨時に他の時期に実施されることもあったのです。儀式が行われる場所では、役蝦夷（惣乙名、乙名、脇乙名、惣小使、小使、土産取などの役職を持つアイヌの人々）全員と主要な平蝦夷（一般のアイヌ）が召集されました。

役蝦夷は陣羽織や小袖といった礼装を着用し、平蝦夷は常服で出席しました。儀式が進行する際、執行者は正面の屋敷の中に座り、地域の掟や親孝行の大切さなどを記した掟書を読み上げました。そして、役蝦夷の任命や報酬の授与、孝子や善行者への表彰、さらに老病者への見舞い品の提供などが行われました。最初は下賜や支給は役蝦夷や特定の受賞者、老病者に限られていましたが、1849年以降はすべてのアイヌに支給されるようになりました。

このように、オムシャは単なる儀式にとどまらず、松前藩とアイヌとの関係を深める重要な役割を果たしていました。場所請負制や村請制度とともに、当時の社会や文化の一部として深い意味合いを持つものであったのです。

参考文献

• - 佐々木利和「オムシャ」（『日本史大事典 1』（平凡社、1992年） ISBN 978-4-582-13101-7）
• - 菊池勇夫「オムシャ」（『国史大辞典 15』（吉川弘文館、1996年） ISBN 978-4-642-00515-9）

関連項目

• - ウイマム
• - 場所請負制
• - 村請制度
• - 役蝦夷-夫役
• - 松前藩
• - 遠国奉行#箱館奉行・松前奉行・蝦夷奉行
• - 平沢屏山アイヌ絵

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