オムニノーバ・マルチライダー

オムニノーバ・マルチライダー

オムニノーバ・マルチライダー（OmniNova Multi Rider）は、スウェーデンに拠点を置くオムニノーバ・テクノロジー社が開発した小型ノンステップバスです。このバスは日本では日産ディーゼル（現在のUDトラックス）を通じて輸入され、主にコミュニティバスとして使われましたが、経営の困難により2002年に輸入が停止されました。

企業の背景

オムニノーバ・テクノロジー社は、ボルボ社と関連のある企業としてスウェーデンのウッデヴァッラに設立されました。マルチライダーは短いホイールベースを持つモデルに分類され、同社の大型バスにはホイールベースが長く、後輪に2軸を搭載した「オムニノーバ・マキシライダー」が存在します。マルチライダーは日本のコミュニティバス運行において広く採用されましたが、経営破綻によって新たな供給が断たれてしまいました。

その後、スウェーデンのコーチ・マニュファクチャリング・スウェーデン社（コマン）が製造を引き継ぎ、日本への再導入も考えられています。

車両の仕様

マルチライダーはルノー製のルノー・マスターを基にした前輪駆動のシャーシを採用しており、オムニノーバがFRP製の車体を仕上げています。その寸法は、全長6.22m、全幅2.13m、全高2.8mで、フルサイズバンと同等のサイズ感を有します。特徴的なのは、側面窓が上下に分かれている点と、客室部分が完全にノンステップで設計されていることです。定員は2扉仕様の場合、座席が13席、立席が11席で、乗員を加えた合計が25名となります。前扉のみの仕様では定員が27名となります。

このバスは全輪独立懸架式のエアサスペンションを搭載し、ニーリング機構も装備されています。エンジンはルノー製のSOF1M型2.8リッター直4ターボインタークーラー付きディーゼルエンジンで、出力は114PS（約84kW）です。トランスミッションは5速MTを採用し、同様のモデルにはCNGエンジン仕様も存在しました。日本向けのデモ車両は、直列4気筒の無過給エンジンを搭載し、出力は106PS（約78kW）でした。

コマン社に引き継がれた後は、2010年にモデルチェンジが行われ、ベース車がルノー・マスターからフィアット・デュカトに変更されました。これにより、許容GVW（総重量）が増加し、さらに新たなバリエーションも登場しました。6.7m級のマルチライダーの他、後2軸化された8m級の「マキシライダー」や9m級の「XLライダー」がラインナップされるなど、多様化が進んでいます。また、電気自動車の開発も行われ、2011年から2012年の投入が計画されています。

日本での導入実績

2000年、大阪市はコミュニティバスの運行を計画し、そのためにオムニノーバ・マルチライダーを採用しました。当初、近畿日産ディーゼルを通じて導入し、20台が運行を開始。一部のモデルは大阪市営バス「赤バス」にも配備されました。2002年には路線再編の際に50台の追加導入が行われ、合計70台となりました。

しかし、これらの車両は日本国産バスに比べて故障が多く、運用面での課題が報告されました。大阪市の「赤バス」での運用は2002年の路線拡充を経て終了し、他の導入事業者でも引退が相次ぎました。その他、上尾市の「ぐるっとくん」や浜松市の「く・る・る」、千歳市の「ビーバス」などさまざまな地域で運行されていましたが、現在はほとんどが引退済みです。日本市場では非常に短期間の運用にとどまったオムニノーバ・マルチライダーですが、その存在はバス運行における国際化の一端を示しています。

もう一度検索