オユトルゴイ鉱山

オユトルゴイ鉱山：モンゴル経済を揺るがす巨大鉱山の光と影

概要

オユトルゴイ鉱山（モンゴル語: Оюу Толгой、Oyu Tolgoi、「ターコイズの丘」の意）は、モンゴル国ウムヌゴビ県ハンボグドに位置する大規模鉱山です。ゴビ砂漠の奥深く、中国との国境に近い場所にあり、露天掘りと地下掘りの両方で採掘が行われています。2001年に発見され、ターコイズ・ヒル・リソーシズとモンゴル国政府の合弁事業によって開発が進められてきました。

この鉱山は、銅と金を主とする豊富な埋蔵量を誇ります。推定埋蔵量は、銅が約1億トン、金が約3000トンとされています。その他にも、銀やモリブデンなども含まれており、その総埋蔵量は世界有数です。2013年に操業を開始し、フル稼働時には、年間約43万トンの銅と42万5000オンスの金を生産する見込みで、これは世界の銅生産量の約3%に相当します。

しかし、この大規模開発は、環境問題や地域住民との軋轢など、様々な問題を引き起こしています。

歴史

この地域は、古くから銅の鉱脈が存在することが知られていました。チンギス・カンの時代には、露頭から銅を精製していた記録もあります。1950年代には、モンゴルの地質学者によって鉱山開発の可能性が指摘されていましたが、本格的な開発が始まったのは2000年代に入ってからです。

1990年代初頭、モンゴルが市場経済に移行した際、この地域では手作業による闇採掘が横行し、環境破壊が進みました。1996年にはマグマ・カッパー社が探鉱を開始、その後BHPビリトンを経て、2000年にアイヴァンホー・マイン社が採掘権を取得しました。大規模なボーリング調査の結果、この地が世界最大級の鉱床であることが判明しました。

2009年、アイヴァンホーとモンゴル政府は開発に合意。その後、リオ・ティントがアイヴァンホーを傘下に収め、この事業を主導するようになりました。2013年1月には生産が開始され、同年7月には中国向けに銅の初出荷が行われました。

経済

オユトルゴイ鉱山は、モンゴルにとって史上最大の経済プロジェクトです。この鉱山が生み出す経済効果は、同国のGDPの30%以上になるとも言われています。しかし、その経済規模の大きさゆえに、様々な問題も生じています。

鉱山開発に必要な費用は、当初の46億米ドルから100億米ドルにまで膨れ上がりました。また、モンゴル政府とリオ・ティントの間では、税金や費用の支払いを巡って対立が生じました。さらに、地下掘りの遅延や労働者の解雇など、多くの問題を抱えています。

モンゴル銀行への金預託が増加したことからも、鉱山開発が経済に与える影響の大きさが伺えます。2013年上半期には2.5トンだった金預託が、2014年上半期には4.1トンにまで増加しました。

環境問題

オユトルゴイ鉱山は、環境問題についても多くの懸念を抱えています。

この鉱山は、年間降水量が非常に少ない乾燥地帯に位置しています。鉱山開発によって、水需要が急増し、牧畜民の生活用水が枯渇するなどの問題が生じています。また、酸性排水による環境汚染や、絶滅危惧種の生息地への影響も懸念されています。

非政府組織からは、生物多様性オフセットに対する不満の声も上がっており、企業側に対し、より詳細な環境保護計画の策定が求められています。鉱山開発に伴う粉塵被害も深刻であり、牧畜民の家畜や健康に悪影響を及ぼしています。

社会問題

モンゴル南部や中央部は、伝統的に遊牧民の土地です。鉱山開発による水資源の枯渇や牧草地の減少は、遊牧民の生活を脅かしています。移住を余儀なくされた遊牧民もおり、生活環境や補償の問題など、多くの課題が残されています。

鉱山周辺では、貧富の格差が拡大しており、鉱山労働者と地元住民との間で、様々な摩擦も生じています。さらに、シャーマン文化が急激に広まっているといった社会的な変化も起きています。

政治問題

オユトルゴイ鉱山の開発を巡っては、政治的な問題も噴出しています。

国会議員による、元首相の不正疑惑の暴露や、海外口座の存在など、様々なスキャンダルが明らかになっています。これらの問題は、モンゴル国内の政治不信を招いており、今後の鉱山開発にも影響を与える可能性があります。

今後の課題

オユトルゴイ鉱山は、モンゴル経済にとって重要な存在ですが、同時に多くの問題も抱えています。環境保護、地域住民との共存、貧困格差の是正など、様々な課題に取り組む必要があります。持続可能な開発を実現するためには、企業だけでなく、政府、地域住民、非政府組織など、様々な関係者との連携が不可欠です。

まとめ

オユトルゴイ鉱山は、モンゴル経済を大きく動かす巨大プロジェクトであると同時に、環境、社会、政治、経済など、多くの問題を含んでいます。この鉱山の開発の過程は、資源開発における光と影、持続可能な開発の難しさを示唆していると言えるでしょう。

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