オラフ・イッテンバッハ

オラフ・イッテンバッハ

オラフ・イッテンバッハ（Olaf Ittenbach）は、1969年にドイツのバイエルン州で誕生した映画監督、脚本家、そして映画プロデューサーであり、特殊効果スタッフ、特殊メイクアップアーティスト、俳優としても活動する多才な人物です。映画界に進む前は歯科技工士として働いていたという、異色の経歴を持っています。

作風とキャリア初期

彼の作品は、主にホラー映画やスプラッター映画に分類され、中でも極めて生々しく、容赦ない残虐描写をトレードマークとしています。このスタイルは、キャリア初期から確立されていました。特に、彼が23歳だった1992年に製作・監督した映画『バーニング・ムーン』（The Burning Moon）は、その暴力と残酷表現の徹底的な追求により、ドイツ国内で大きな波紋を呼びました。結果として、ドイツ当局からは「暴力を賛美している」と見なされ、訴追を受ける事態に発展。本国におけるノーカット版の上映・頒布が禁止されるという、厳しい発禁処分を命じられました。

ドイツ国内においては、その後も彼の作品に対して18歳未満への鑑賞禁止指定や、一部の残虐描写をカットするといった厳しい規制が課されることが少なくありません。しかしながら、ファンにとっては朗報として、ノーカット版のDVDやブルーレイディスクはリリースされており、完全な形で作品を鑑賞することが可能となっています。

国際的な活動の展開

イッテンバッハのキャリアは、国内での問題に留まらず、国際的な舞台へと広がります。2001年には、ゾンビを題材にしたホラー映画『ゾンヴァイア/死霊大血戦』（Legion of the Dead）でハリウッドデビューを果たしました。これを機に、アメリカ合衆国との共同資本で映画を製作する機会が増加します。『ビヨンド・ザ・リミット』（Beyond the Limits）や『ハウス・オブ・ブラッド』（Chain Reaction/House of Blood）といった作品は、こうした共同製作体制の中で生まれました。これにより、彼の過激な作風は、より広い観客層に知られることとなりました。

多様な役割をこなす異才

イッテンバッハは、単にメガホンを取るだけでなく、脚本執筆や製作も自ら手掛けることが多く、自身の作品世界を深く掘り下げています。加えて、彼の作品に不可欠な特殊効果や特殊メイクも自ら担当することがしばしばあります。これは、歯科技工士としての精密な技術が活かされているのかもしれません。その技術力は高く評価されており、自身の作品以外にも、悪名高きウーヴェ・ボル監督の映画（『ブラッドレイン』など）に特殊メイク・特殊効果スタッフとして参加するなど、他の監督の作品にも貢献しています。また、時には俳優として画面に登場することもあり、その活動範囲の広さを示しています。

私生活

私生活においては、2004年にマルティーナ・シュースターと結婚しましたが、2010年に離婚に至っています。その後、2012年に再婚しています。

ドイツホラーにおける位置づけ

オラフ・イッテンバッハは、ユルグ・ブットゲライトやアンドレアス・シュナースといった他のドイツのインディペンデントホラー監督たちと共に、ドイツ過激派ホラー（German Gore）の代表的な存在として語られることがあります。彼らの作品はしばしば倫理的な議論を巻き起こしますが、その徹底した表現スタイルは一部で熱狂的な支持を集めています。イッテンバッハの作品リストは、監督作品だけでも『Black Past』、『新ゾンビ』（Premutos - Der gefallene Engel）、『ダード・ディボース』（Dard Divorce）など多数にのぼり、監督以外の参加作品を含めるとさらに多岐にわたります。その作品群は、彼のホラー表現に対する一貫した姿勢と、技術者としての手腕を物語っています。

もう一度検索