オリヅルスミレ

オリヅルスミレ（折鶴菫）

オリヅルスミレ（学名：Viola stoloniflora）は、スミレ科スミレ属に属する常緑の多年草です。この植物は、匍匐茎をほふくさせて繁茂する特徴を持ち、和名の由来もその姿勢に由来しています。特に、匍匐茎から成長し、花が咲く様子が折り鶴に似ていることから「折鶴菫」と名付けられました。

概要

オリヅルスミレは、1982年に沖縄の教師である比嘉清文によって最初に発見され、1988年には琉球大学の横田昌嗣がこの植物を新種として正式に発表しました。オリヅルスミレの葉はハート型で、ロゼット状に配置され、独特な形状をしています。美しい白い花は、下側の3枚の花弁の付け根に紫色の細い線が走り、優雅な印象を与えます。特に、中央の花弁（唇弁）が他の4枚より大きく、先端が凹んでいるのが特徴です。

繁殖方法には、匍匐茎だけでなく種子も用います。この種子は非常に小さく、直径は1mm程度で、重量は100粒あたり約18mgと、日本のスミレ類の中で最も軽量です。また、エライオソームを持っているため、種子は爆発的に散播された後、アリに運ばれることが広く知られています。

分布

オリヅルスミレは、沖縄本島の辺野喜川中流域に生息していることが確認されています。この植物は、日本の他の地域では見られず、特に沖縄の暖かい気候に適しています。しかし、不幸なことに、唯一の生息地はダムの建設により破壊されてしまいました。

近縁種

オリヅルスミレに近い種として、1994年に発見されたテリハオリヅルスミレがあります。この種は、本種とは幾つかの違いがあり、現在も学名が確定されていません。環境省の第5次レッドリストでは、これらの情報が不足していることから、カテゴリ外として扱われています。オリヅルスミレと最も近縁とされるのは、台湾に分布するウラジロスミレ（V. formosanae）で、近年の研究ではこれら二つの種が同じ分類群である可能性が示唆されています。

保全状態評価

オリヅルスミレは、環境省のレッドリストで「野生絶滅」に指定されています。実際、唯一の生息地がダムの建設によって破壊されたため、新たな生息地が確認されていません。本種は暑さに弱いため、沖縄での増殖が難しく、広島市植物公園で栽培されています。筑波実験植物園や海洋博覧会記念公園管理財団などでも栽培されている個体の多くは、広島市植物公園から譲り受けたものです。

このように、オリヅルスミレは沖縄の特異な生態系を象徴する植物であり、その保全は私たちの責任です。今後の研究と保護活動が成功を収めることを願っています。

もう一度検索