オリンピア (映画)

『オリンピア』の概要

『オリンピア』は、1938年にドイツで公開された1936年ベルリンオリンピックの記録映画であり、2部作から成り立っています。監督はレニ・リーフェンシュタールで、日本では『民族の祭典』と『美の祭典』の2つの部分に分けて上映されました。前者は開会式から男子マラソンまでの21種目を、後者は陸上競技を除く17種目から閉会式までを記録しています。

制作背景

レニ・リーフェンシュタールは、アドルフ・ヒトラーの信任を受けた監督であり、ナチスの党大会を記録した『意志の勝利』でも知られています。『オリンピア』の撮影はナチス政府の全面的な支援を受けて行われましたが、当時の宣伝相であるヨーゼフ・ゲッベルスとの間には、撮影内容を巡る対立もあったと言われています。この作品にはナチス政権が嫌悪する有色人種の選手も多く登場しており、その点でも多くの議論を呼びました。

映像美と評価

本作は、1年半の編集を経てようやく公開され、映像の美しさや独自の編集技術が世界中で評価されました。特に1938年のヴェネツィア国際映画祭では最高賞であるムッソリーニ杯を受賞。日本でも1940年のキネマ旬報外国映画ベストテンで1位を獲得し、戦前の観客動員記録を更新するなど、大ヒットしました。しかし、第二次世界大戦後はナチスのプロパガンダとしての側面が問題視され、非難を受けることとなりました。

創作手法

リーフェンシュタールは、厳密なドキュメンタリーという形式にはこだわらず、競技の実際の映像だけでなく再現フィルムや助け合う映像を取り入れ、スポーツの身体美を表現しました。そのため、競技後に選手を集めて再撮影したシーンや、練習中の映像が含まれています。たとえば、夜間の競技やマラソン、ハイジャンプなどは効果音や演出が施された形で映像化されました。

このような演出方法に対しては批判がありましたが、映画評論家の荻昌弘は、リーフェンシュタールが当時の技術で完璧な作品を生み出したと擁護する意見もあります。著者の沢木耕太郎もこの作品を「極上のブロマイド」と評し、その価値を認めています。

バージョンと配信

『オリンピア』は、陸上競技に重点を置いた『民族の祭典』と、陸上以外の競技が含まれる『美の祭典』から成ります。前者には日本人選手の活躍が見られ、後者には馬術の選手の姿も確認できますが、女子200メートル平泳ぎの映像はオリジナル版には含まれていません。1940年の日本公開時には、前畑秀子選手の映像を加えた特別バージョンが作成されました。

1982年には両作品をまとめた総集編が発表され、DVD版でも様々なバージョンが流通しています。特に、アメリカンバージョンでは一部の競技がカットされており、オリジナル版とは異なる編集が施されています。

日本での公開

当時の日本ではテレビが存在せず、ラジオ中継だけが主流であったため、『オリンピア』の映像公開は大きな話題となりました。映画の大ヒットにより、ライバル社の代表者も悔しがったと伝えられています。また、手塚治虫の作品にも『オリンピア』の影響が見られることから、この映画が与えた影響の大きさが伺えます。

結論

『オリンピア』は、その芸術的価値や映像技術において高い評価を受けていますが、ナチスの影響を受けた作品としての側面も無視できません。映画史における重要な作品であり、後のオリンピック映画に多大な影響を与えたと考えられています。

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