オリヴィエ (パラディン)
オリヴィエ（Olivier）は、中世ヨーロッパの武勲詩などで語られる伝説の集成「フランスの話材」に登場する、シャルルマーニュ大帝に仕えた高名な十二勇士（パラディン）の一人です。中でも、最も名高い武勲詩『ローランの歌』における重要人物として知られ、主人公ローラン（イタリア語読みでオルランド）の無二の親友かつ幼馴染として描かれます。勇猛果敢なローランに対し、彼は思慮深く冷静沈着な知将であり、フランス軍の中でも卓越した常識の持ち主と評されています。
オリヴィエとローランの初めての出会いは、武勲詩『ジラール・ド・ヴィエンヌ』の中で語られています。長年にわたり続いていたシャルルマーニュ大帝とその有力な臣下ジラールとの間の紛争に終止符を打つべく、両陣営から代表の勇士を選出し、一騎打ちによって雌雄を決することとなりました。この決闘において、シャルルマーニュ側からは若きローランが、そしてジラール側からは同じく若きオリヴィエがそれぞれの代表として選ばれたのです。
壮絶な戦いを繰り広げる両者でしたが、その決着は神の介入によって阻まれます。天使が地上に降り立ち、互いに争うのではなく、手を取り合って異教徒が支配するスペインへの遠征に向かうよう命じたのです。この神託を機に、ローランとオリヴィエは固い友情を誓い合い、以後、生涯にわたる戦友となることを誓いました。また、この和解の過程で、オリヴィエの妹である美しいオードに心惹かれたローランは、彼女と婚約を交わしました。こうして、シャルルマーニュ大帝とジラールの長年の対立はついに終結し、フランス軍は合同してスペインへの進軍を開始したのです。
『ローランの歌』におけるオリヴィエは、ローランと互いに深い信頼を寄せ合う関係にあります。彼は単なる戦友としてだけでなく、ローランにとってかけがえのない助言者でもありました。先に述べた通り、彼の妹オードはローランの婚約者となっています。
オリヴィエの愛剣は「オートクレール」と名付けられた優美な剣です。伝承によれば、その刀身は茶褐色に輝き、柄は黄金色で、見事な水晶によって飾られていたとされます。ローランとオリヴィエの絆は、ホメロスの叙事詩『イリアス』に登場するアキレウスとパトロクロスのような、男性間の深く親密な友愛としてしばしば評されます。
特に、その人物像の対比が強調されます。ローランが感情的で向こう見ずなほどの勇猛さを体現するのに対し、オリヴィエは常に冷静沈着で、戦況を的確に判断し最善の手を打つ知将としてのイメージが際立っています。
物語の核心部である、ロンスヴォーの谷での殿軍（しんがり）の任務においても、オリヴィエはローランと共に選ばれました。敵であるサラセン（イスラム）の大軍が迫るのをいち早く察知したオリヴィエは、シャルルマーニュ大帝に援軍を求めるべく、ローランに合図の角笛「オリファン」を吹くよう強く進言します。しかし、自身の名誉や面子にこだわるローランはこれを頑なに拒否しました。オリヴィエのこの冷静な判断に従っていれば、その後のフランス軍の大敗は避けられたであろうと、物語は示唆しています。
最終的に避けられなかったロンセスバージェスの戦い（ロンスヴォーの戦い）において、オリヴィエは獅子奮迅の活躍を見せます。記録されているだけでも、彼が討ち取った敵将の数はローランを凌いでおり、個人的な武勇においても彼が劣ることは決してありませんでした。しかし、激戦の末、イスパニアの将軍マルガニスから致命的な傷を負わされます。オリヴィエは最後の力を振り絞ってマルガニスを討ち果たしますが、その傷が元で自身もまた、戦場の露と消えました。
『ローランの歌』以外のフランス武勲詩においては、異教徒の巨人フィエラブラスとの戦いが描かれるエピソードも存在します。オリヴィエはフィエラブラスを打ち破った後、彼をキリスト教に改宗させたとも語られています。
ルネサンス期にイタリアの詩人アリオストが著した壮大な叙事詩『狂えるオルランド』にも、オリヴィエは登場します。ただし、この作品における彼の活躍はフランスの武勲詩ほど多くはありません。主人公であるオルランド（ローラン）の主要なサポート役は、主にアストルフォやフロリマールといった他の騎士が務めています。むしろ、オリヴィエ自身の息子たちであるグリフォーネとアクイランテの方が、物語における出番が多いほどです。
彼が『狂えるオルランド』で存在感を示すほぼ唯一の見せ場は、アフリカにおいて、オルランドが所有する名剣ドゥリンダナ（ローランの剣デュランダル）を賭けて行われた異教徒との変則的な三人対三人の試合に参加した場面です。この試合の申し出を受けたオルランドは、その場に居合わせた騎士の中からオリヴィエとフロリマールを選び、共に戦いに臨みました（リナルドやルッジェーロといった他の著名な騎士は、この時その場にいなかったため参加していません）。試合では、敵の大将であるアフリカ王アグラマンテらを相手にフランス側は優勢に進めます。しかし、一瞬の隙をつかれ、一時的にオリヴィエが一人で二人の敵と対峙する状況に陥った際、イスラムの戦士ソブリノの攻撃を受けて落馬してしまいます。さらに不運にも、馬の下敷きとなって身動きが取れなくなってしまう窮地に陥りますが、味方チームの勝利によって九死に一生を得ました。
このように、オリヴィエはフランス文学史において、単なる武勇に優れた騎士としてだけでなく、主人公の対をなす知的な親友として、また悲劇的な最期を迎える英雄の一人として、重要な位置を占める人物です。
オリヴィエとローランの初めての出会いは、武勲詩『ジラール・ド・ヴィエンヌ』の中で語られています。長年にわたり続いていたシャルルマーニュ大帝とその有力な臣下ジラールとの間の紛争に終止符を打つべく、両陣営から代表の勇士を選出し、一騎打ちによって雌雄を決することとなりました。この決闘において、シャルルマーニュ側からは若きローランが、そしてジラール側からは同じく若きオリヴィエがそれぞれの代表として選ばれたのです。
壮絶な戦いを繰り広げる両者でしたが、その決着は神の介入によって阻まれます。天使が地上に降り立ち、互いに争うのではなく、手を取り合って異教徒が支配するスペインへの遠征に向かうよう命じたのです。この神託を機に、ローランとオリヴィエは固い友情を誓い合い、以後、生涯にわたる戦友となることを誓いました。また、この和解の過程で、オリヴィエの妹である美しいオードに心惹かれたローランは、彼女と婚約を交わしました。こうして、シャルルマーニュ大帝とジラールの長年の対立はついに終結し、フランス軍は合同してスペインへの進軍を開始したのです。
『ローランの歌』における役割
『ローランの歌』におけるオリヴィエは、ローランと互いに深い信頼を寄せ合う関係にあります。彼は単なる戦友としてだけでなく、ローランにとってかけがえのない助言者でもありました。先に述べた通り、彼の妹オードはローランの婚約者となっています。
オリヴィエの愛剣は「オートクレール」と名付けられた優美な剣です。伝承によれば、その刀身は茶褐色に輝き、柄は黄金色で、見事な水晶によって飾られていたとされます。ローランとオリヴィエの絆は、ホメロスの叙事詩『イリアス』に登場するアキレウスとパトロクロスのような、男性間の深く親密な友愛としてしばしば評されます。
特に、その人物像の対比が強調されます。ローランが感情的で向こう見ずなほどの勇猛さを体現するのに対し、オリヴィエは常に冷静沈着で、戦況を的確に判断し最善の手を打つ知将としてのイメージが際立っています。
物語の核心部である、ロンスヴォーの谷での殿軍（しんがり）の任務においても、オリヴィエはローランと共に選ばれました。敵であるサラセン（イスラム）の大軍が迫るのをいち早く察知したオリヴィエは、シャルルマーニュ大帝に援軍を求めるべく、ローランに合図の角笛「オリファン」を吹くよう強く進言します。しかし、自身の名誉や面子にこだわるローランはこれを頑なに拒否しました。オリヴィエのこの冷静な判断に従っていれば、その後のフランス軍の大敗は避けられたであろうと、物語は示唆しています。
最終的に避けられなかったロンセスバージェスの戦い（ロンスヴォーの戦い）において、オリヴィエは獅子奮迅の活躍を見せます。記録されているだけでも、彼が討ち取った敵将の数はローランを凌いでおり、個人的な武勇においても彼が劣ることは決してありませんでした。しかし、激戦の末、イスパニアの将軍マルガニスから致命的な傷を負わされます。オリヴィエは最後の力を振り絞ってマルガニスを討ち果たしますが、その傷が元で自身もまた、戦場の露と消えました。
その他の伝承
『ローランの歌』以外のフランス武勲詩においては、異教徒の巨人フィエラブラスとの戦いが描かれるエピソードも存在します。オリヴィエはフィエラブラスを打ち破った後、彼をキリスト教に改宗させたとも語られています。
ルネサンス期にイタリアの詩人アリオストが著した壮大な叙事詩『狂えるオルランド』にも、オリヴィエは登場します。ただし、この作品における彼の活躍はフランスの武勲詩ほど多くはありません。主人公であるオルランド（ローラン）の主要なサポート役は、主にアストルフォやフロリマールといった他の騎士が務めています。むしろ、オリヴィエ自身の息子たちであるグリフォーネとアクイランテの方が、物語における出番が多いほどです。
彼が『狂えるオルランド』で存在感を示すほぼ唯一の見せ場は、アフリカにおいて、オルランドが所有する名剣ドゥリンダナ（ローランの剣デュランダル）を賭けて行われた異教徒との変則的な三人対三人の試合に参加した場面です。この試合の申し出を受けたオルランドは、その場に居合わせた騎士の中からオリヴィエとフロリマールを選び、共に戦いに臨みました（リナルドやルッジェーロといった他の著名な騎士は、この時その場にいなかったため参加していません）。試合では、敵の大将であるアフリカ王アグラマンテらを相手にフランス側は優勢に進めます。しかし、一瞬の隙をつかれ、一時的にオリヴィエが一人で二人の敵と対峙する状況に陥った際、イスラムの戦士ソブリノの攻撃を受けて落馬してしまいます。さらに不運にも、馬の下敷きとなって身動きが取れなくなってしまう窮地に陥りますが、味方チームの勝利によって九死に一生を得ました。
このように、オリヴィエはフランス文学史において、単なる武勇に優れた騎士としてだけでなく、主人公の対をなす知的な親友として、また悲劇的な最期を迎える英雄の一人として、重要な位置を占める人物です。
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