オリーブ牛

オリーブ牛（Olive fed Wagyu Beef、Olive Beef）

オリーブ牛は、香川県で生産されているブランド和牛です。その最大の特徴は、出荷前の2ヶ月間、1日あたり1頭につき100グラム以上の「オリーブ飼料」を給与して育てられている点にあります。この特別な飼育方法により、オリーブ牛は一般的な讃岐牛とは異なる独特の風味と品質を持つ牛肉となります。

オリーブ牛の誕生

元々は小豆島、小豊島のブランド牛として「小豆島オリーブ牛」という名称で販売されていました。しかし、小豆島産の牛は輸送コストなどがかさみ、本州産の牛肉に比べて高価になる傾向がありました。また、神戸牛などの有名ブランド牛と比較して評価が低いという課題も抱えていました。

この状況を打破するため、オリーブ飼料を与えることで牛肉に含まれるオレイン酸の量を増やし、付加価値を高めるという試みが始まりました。オレイン酸は、牛肉の風味を豊かにし、健康にも良いとされる不飽和脂肪酸の一種です。

オリーブ飼料について

オリーブ飼料は、香川県内のオリーブオイル生産工場で、オリーブの搾りかすを天日干しにして作られています。香川県、特に小豆島は日本におけるオリーブの一大産地であり、その生産量は国内全体の9割以上を占めています。

オリーブオイルを生産する過程では、大量の搾りかすが発生します。以前は、これらの搾りかすは産業廃棄物として処理されていましたが、処理にはコストがかかります。そこで、これらの搾りかすを飼料として再利用することで、廃棄物処理コストの削減と、新たな地域資源の活用という一石二鳥の効果が期待されました。

東洋オリーブをはじめとするオリーブオイル生産者は、乾燥機を導入して搾りかすを乾燥させ、畜産農家に提供するようになりました。当初は手作業での乾燥作業でしたが、後に香川県の補助金を受けて全自動乾燥機を導入し、オリーブ飼料の品質安定と生産量増加に成功しました。

現在では、東洋オリーブの他に、アグリオリーブ小豆島、法美匠、瀬戸内オリーブの計4社がオリーブ飼料を生産・提供しています。東洋オリーブは小豆島と小豊島に限定して供給していますが、他の3社は香川県全域に供給しています。また、法美匠はNPO法人の障害者福祉サービス事業所として、オリーブ飼料の生産に取り組んでいます。

ブランド化の成功

オリーブ牛は、通常の讃岐牛に比べて卸値で1頭あたり6万円から8万円、小売値では100gあたり150円から200円ほど高く取引されています。その背景には、「健康的な和牛」というイメージ戦略と、消費者の健康志向の高まりがあります。

オリーブ牛の肥育頭数は年々増加しており、2012年には1100頭だったものが、2016年には2277頭と倍増しています。これは、オリーブ牛の販売認定条件が緩和されたことや、香川県全域で肥育されるようになったことも要因として挙げられます。

2016年度の香川県産品認知度調査では、オリーブ牛の県内認知度は86.7%と非常に高く、香川県産ブランド品としては第1位を獲得しています。これは、讃岐うどん、ハマチ・ブリ類に次ぐ第3位という高い評価です。

今後の展開

オリーブ牛は、主に日本国内で消費されていますが、JA香川県やJA全農ミートフーズを通じてシンガポールやアメリカ合衆国への輸出も行われています。今後は、首都圏や関西圏の飲食店や卸業者を対象としたセミナーを開催するなど、販売促進活動を強化し、さらなる販路拡大を目指しています。

讃岐オリーブ牛振興会

オリーブ牛のPR活動や販売戦略の策定は、流通業者、JA、オリーブ牛畜産家、香川県、レストラン等の調理業者などが一体となった「讃岐オリーブ牛振興会」が担当しています。

歴史

讃岐牛は1988年に商標登録されましたが、他のブランド牛との競争は厳しい状況でした。2007年に開催された全国和牛能力共進会で、オレイン酸含有量が評価項目として導入されたことをきっかけに、小豆島の肥育農家である石井正樹氏がオリーブに着目し、オリーブ飼料の開発に取り組みました。

石井氏は、オリーブオイル生産工場から搾りかすを譲り受け、天日干しすることで牛の嗜好に合った飼料を作り上げました。このオリーブ飼料を与えた肥育牛は、市場で高い評価を得ることとなりました。2010年には石井氏を中心に「小豆島オリーブ牛研究会」が設立され、2011年からは地元の学校給食にもオリーブ牛が提供されるようになりました。

同年、香川県は「うどん県。それだけじゃない香川県」プロジェクトを立ち上げ、オリーブ牛を香川県のブランドとして強化する取り組みを開始しました。

受賞歴

去勢肥育牛（第9区）優等賞、一等賞
第11回全国和牛能力共進会出品「脂肪の賞」受賞

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