オルカ (映画)

オルカ（Orca）

1977年に公開されたアメリカとイタリア合作のパニック映画で、監督はマイケル・アンダーソンが務めました。1970年代半ば、『ジョーズ』の世界的ヒットを受け、数多くの動物パニック映画が製作されましたが、本作もまた、このブームに乗じて生み出された作品の一つです。

概要

当時の日本においては、「マリーン・サイエンス」や「Scientific・Panic・Adventure・Cinemaの頭文字を取った“スパック（SPAC）･ロマン”」という独自のカテゴリーで宣伝・公開されました。一般的な動物パニック映画が『本能的な獰猛さ』に焦点を当てるのに対し、本作ではシャチを『高度な知性を持ち、家族に対する強い愛情から復讐を誓う存在』として設定しています。この点が、単なるモンスターパニックとは異なる、動物の感情や知性に踏み込んだドラマ性を作品にもたらしています。

製作は、前年の大作『キングコング』（1976年）で知られるディノ・デ・ラウレンティスが手掛けました。脚本はルチアーノ・ヴィンチェンツォーニが担当し、その際に海洋学者である自身の弟からの助言が大いに参考にされたと言われています。

総製作費は1200万ドル強、撮影期間は約1年2ヶ月に及びました。主演を務めたリチャード・ハリスは、役作りのためか、撮影中は禁酒して臨んだというエピソードが残されています。

タイトルの『オルカ』は、もちろん作中に登場するシャチに由来しており、シャチの学名である「Orcinus orca」から直接取られています。

日本では、同時期に公開されたSF映画『カプリコン・1』と共に、配給元の東宝東和が創立50周年を記念する作品として上映されました。

家庭用ソフトに関しては、国内で販売されたビデオ版ではエンディングに使用されていたボーカル曲がカットされていましたが、後にリリースされたDVD版では、英語音声を選択した場合にのみ再生される仕様に変更されました。

ストーリー

物語は、アイルランド出身の船長ノーランが、水族館へ売却するためのサメ捕獲を計画するところから始まります。彼の船には、ベテラン船員のノバック、若いポール、そしてポールの恋人であるアンが乗り組んでいました。カナダ・ニューファンドランド島に到着したノーランは、そこで巨大で美しいシャチ（オルカ）を目撃します。

ノーランはオスのシャチを生け捕りにしようと試みますが、誤ってその隣にいた妊娠中のメスのシャチに銛を撃ち込んでしまいます。この痛恨のミスにより、メスだけでなく、そのお腹にいた子供も命を落としてしまいます。

愛する妻と子を一度に失ったオスのシャチは、深い悲しみと激しい怒りから、ノーランに対する復讐を開始します。まず、ノーランの船を執拗に攻撃し、船員のノバックが犠牲となります。

現地で調査を行っていた海洋生物学者のレイチェルは、シャチの行動を目にし、ノーランに警告します。彼女は、シャチが人間と同等、あるいはそれ以上の高い知能を持ち、家族の死を深く悲しみ、その喪失感から復讐心に燃えているのだと説明します。

しかし、シャチの復讐は止まりません。港を容赦なく襲撃し、停泊する漁船や港湾施設を次々と破壊していきます。ノーランは部下たちだけでも陸路で逃がそうとしますが、港の人々はシャチを刺激した彼らを許さず、陸へ上がることを阻まれます。遂には、乗組員のアンがシャチに足を噛み千切られるという悲劇に見舞われます。

救急搬送されたアンに代わり、海洋生物学者レイチェルらがノーランの船に乗り込み、シャチの待つ広大な海へ出港することを余儀なくされます。復讐鬼と化したシャチは、まるでノーランたちを誘うかのように、一路北極海を目指して北上を続けます。

氷山が点在する危険な海域を進むにつれて、乗組員たちは一人、また一人と命を落としていきます。ついにはノーランとレイチェルだけが生き残り、沈みかけた船から巨大な氷山へと避難します。そこでノーランはシャチとの最終的な死闘に挑みますが、力尽きて敗れ去ります。その後、救難信号を受けて現場に駆け付けたヘリコプターが発見したのは、奇跡的に生き残ったレイチェルただ一人でした。

その他

本作は、日本のテレビドラマシリーズにも影響を与えています。石原プロモーションが製作した刑事ドラマ『大都会 PARTII』の1978年1月31日に放送された第44話「殺人捜査」では、容疑者のアリバイとして本作を映画館で鑑賞していたシーンが登場し、当時の日本向けポスターも画面に映し出されました。

また、作中でシャチ役を務めた個体の中には、「キアヌ」という名前のシャチがいました。このキアヌは、後に日本のワールドサファリ（現在の名称はアドベンチャーワールド）に搬入され、そこで飼育されショーに出演していたという、映画と日本の縁を示す珍しいエピソードも存在します。

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