オルタモント・フリーコンサート

オルタモント・スピードウェイでの悲劇：1969年のローリング・ストーンズ・コンサート

1969年12月6日、カリフォルニア州トレイシー郊外のオルタモント・スピードウェイで、ローリング・ストーンズ主催のフリーコンサートが開催されました。このイベントは、ストーンズのアメリカツアー最終日に行われた、最大規模の野外コンサートとして知られていますが、同時に『オルタモントの悲劇』と呼ばれる、暗い歴史を持つ出来事でもあります。

夢から悪夢へ：コンサートへの道のり

ストーンズのアメリカツアーは11月7日に始まり、最終日のフリーコンサート開催は、サンフランシスコでの開催が発表されました。入場無料という大胆な試みは、前ツアーでの莫大な利益に対する地元マスコミの批判に対する反論の意味合いもあったとされます。しかし、準備期間の短さ、会場決定の遅れなどから、イベントは最初から混乱を招く要素を抱えていました。当初予定されていた会場は断られ、開催直前にオルタモント・スピードウェイが会場となりました。

警備は、バイク集団ヘルズ・エンジェルスに委託されました。ハイドパーク・フリーコンサートでの経験から、ストーンズ側はエンジェルスに警備を任せましたが、この選択が後の悲劇の大きな原因となりました。

開催前日の告知は、大規模な交通渋滞を引き起こし、イベントの混乱はすでに始まっていました。

暴走する混沌：コンサート当日

コンサート当日は、会場には麻薬中毒者らしき者も多く、LSDなどのドラッグが公然と流通していました。セキュリティは脆弱で、会場内は秩序を失い、数多くの事件が発生しました。医師の数も不足しており、医療体制も崩壊寸前でした。

ストーンズのメンバーはヘリコプターで会場入りしましたが、ミック・ジャガーは移動中に観客から襲撃を受けました。演奏が始まっても、暴動は収まるどころか激化の一途をたどりました。ヘルズ・エンジェルスは、暴力で群衆を制圧しようとし、観客を殴打する様子が映画にも記録されています。ジェファーソン・エアプレインの演奏中には、観客の仲裁に入ったメンバーがエンジェルスに襲われる事件も発生しました。混乱は増し、グレイトフル・デッドは出演をキャンセルしました。

悲劇の瞬間：殺害事件

ヘッドライナーのストーンズは、日没後、ようやく登場しました。彼らの登場は、故意に時間を遅らせて観客を煽る演出でしたが、すでに暴徒化していた群衆をさらに興奮させました。

「アンダー・マイ・サム」の演奏中、18歳の黒人青年メレディス・ハンターがヘルズ・エンジェルスと衝突、エンジェルスのメンバー、アラン・パサーロによってナイフで刺殺されました。この事件はステージ近くで発生しましたが、ストーンズは気づかず、演奏は続けられました。パサーロは正当防衛を主張し、無罪となりました。

ハンター殺害以外にも、コンサートではさらに2人の死者が出ました。一人は暗闇で自動車に轢かれた若者、もう一人は麻薬の影響下で警察官から逃走中に死亡しました。また、4件の出産も報告されています。

衝撃と余波：オルタモントの悲劇

観客殺害という衝撃的な事件は、世界中に衝撃を与えました。ローリング・ストーン誌は「ロックンロールにとって最悪の日」と報じました。オルタモントの悲劇は、4ヶ月前に開催された平和なウッドストック・フェスティバルと対比され、一つの時代の終わりを示す出来事として語られています。

この事件の後、ヘルズ・エンジェルスとストーンズの関係は完全に悪化しました。ジャガーの暗殺計画もあったと報じられており、その影は長くストーンズを付きまといました。

オルタモント・フリーコンサートは、その規模、そして悲劇によって、ロック史に大きな足跡を残すイベントとなりました。華々しい成功の裏に潜む危険、そして組織の失敗がもたらす恐ろしい結果を示す、戒めの物語として、今日でも語り継がれています。

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