オルダ

オルダ：ジョチ・ウルスの重鎮とその系譜

オルダは、モンゴル帝国を築いたチンギス・カンの直系子孫であり、その影響力はジョチ・ウルスの歴史に深く刻まれています。ジョチの長男として誕生したオルダは、母方の出自からコンギラト部族との繋がりを持ち、その後の政治的行動にも影響を与えたと考えられます。

ジョチの死後、オルダは父の後継者争いに大きく関わりました。弟のバトゥとジョチ直属の軍勢を率いて、ジョチ・ウルスの左翼を形成し、勢力基盤を確立しました。多くの史料が、オルダがバトゥをジョチ家の当主として擁立するクリルタイを主宰したことを示しており、バトゥの後継者としての地位確立に重要な役割を果たしたことがわかります。チンギス・カン自身もバトゥを後継者として指名したという記録も存在し、オルダはその決定を支持したと推察されます。 13世紀におけるバトゥによるルーシ遠征にも参加するなど、オルダは常に主要な政治的役割を担っていました。

グユクの大ハーン即位時には、バトゥの代理としてクリルタイに出席。チャガタイ・ウルスのイェス・モンケと共にグユクの即位を承認するなど、帝国全体の政治にも深く関わっていました。さらに、グユク即位後に権力掌握を企てたテムゲ・オッチギンへの取り調べにも参加、モンケと共に重要な役割を果たしたと考えられています。1250年代半ば以降のオルダの動向は史料から確認できませんが、息子のクリをフレグの西征に派遣するなど、政治的影響力を保ち続けたと推測されます。

オルダ死後、その地位を継いだのは四男のコンクランでした。オルダ・ウルスは名目上はバトゥを宗主とするジョチ・ウルスに属していましたが、実際は独立性を保ち、独自の行動をとることもありました。オルダの死後も、オルダ・ウルスはジョチ・ウルス内の重要な勢力として存在し続けました。

オルダの出自に関しては、いくつかの説があります。オルダの生母はコンギラト部族出身のサルタクという女性であったと『集史』に記されています。また、他の資料には、オルダには同母兄弟のエセンがいたと記されており、オルダの母がコンギラト部族の女性であったことはほぼ確実です。オルダがジョチの末子であったという説もありましたが、これは多くの反論を呼んでいます。その理由は、モンゴルの末子相続の習慣と、オルダがジョチの主要な拠点を受け継いだ事実から導き出された推測であったためです。オルダの渾名「エジェン」が四男に付けられる名前であるという説もあり、オルダがジョチの四男であった可能性も指摘されています。

オルダの家族構成も興味深い点です。史料によると、オルダには3人の妃と、7人の男子、2人の女子がいたとされています。その子孫たちは、オルダ・ウルスのみならず、ジョチ・ウルスの各地で重要な役割を果たしました。特に、クリやフレグといった息子たちは、後のオルダ・ウルスの歴史に大きな影響を与えた人物です。オルダの系図は複雑であり、その子孫たちが様々な地域に広がり、それぞれの勢力を築いていったことがわかります。

オルダは、ジョチの存命中から敬意を払われており、バトゥがジョチ家の当主となってからもその影響力は衰えませんでした。オルダとその子孫、そしてオルダ・ウルスの歴史を紐解くことは、モンゴル帝国初期の歴史、特にジョチ・ウルスの複雑な政治状況を理解する上で不可欠です。様々な史料を比較検討することで、より正確なオルダ像とその時代背景を明らかにする必要があるでしょう。様々な研究者による見解の相違も踏まえ、今後の更なる研究が期待されます。

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