オルロフ家

ロシア貴族オルロフ家：エカチェリーナ2世と栄華を極めた一族とその遺産

オルロフ家は、18世紀のロシアで台頭した名門貴族家系です。その隆盛は、エカチェリーナ2世の即位に深く関わっており、彼女への貢献と、後世に残した多大な影響は特筆に値します。男系が途絶えた後も、血縁関係にあるダヴィドフ家を後継者として迎え入れ、オルロフ伯爵家は存続しました。

オルロフ兄弟：エカチェリーナ2世即位への貢献

オルロフ家の隆盛を築いたのは、何よりも「オルロフ四兄弟」として知られる兄弟たちの活躍です。中でも、グリゴリー・グリゴリエヴィチ・オルロフは、その中心人物でした。

グリゴリーは、七年戦争に従軍した後、エカチェリーナ・アレクセーエヴナ（後のエカチェリーナ2世）の愛人となり、彼女によるクーデターを陰で支えました。ピョートル3世の失政と、エカチェリーナとピョートル3世の不仲は、貴族や軍隊からの反感を招いており、グリゴリーはニキータ・パーニン伯やエカテリーナ・ダーシュコワらと共に、エカチェリーナ2世の即位を企てました。1762年のクーデターは成功し、エカチェリーナ2世が即位すると、グリゴリーは伯爵に叙され、要職に就きました。

グリゴリーは、政治家としての才能に欠けていたものの、機転と的確な見識を持っていました。エカチェリーナ2世の治世初期には、重要な顧問として活躍し、農奴制問題にも関心を寄せ、部分的な解放を主張しました。また、「自由経済協会」の総裁や全ロシア法制委員会の委員を務めるなど、啓蒙専制君主を目指したエカチェリーナ2世の政策にも貢献しました。しかし、オスマン帝国との講和交渉を失敗したことで失寵し、エカチェリーナ2世の寵愛はポチョムキンへと移っていきました。

グリゴリーは失われた寵愛を取り戻すために、巨大なダイヤモンド「オルロフ」を献上しましたが、叶いませんでした。晩年は外国に渡り、帰国後はモスクワで静かに余生を送りました。

一方、弟のアレクセイ・グリゴリエヴィチ・オルロフは、四兄弟の中でも最も有能で、クーデターにも大きく貢献し、ピョートル3世の暗殺にも関与したとされています。オスマン帝国との戦争では、チェスマの海戦で勝利を収め、「オルロフ＝チェスメンスキー」の称号を得ました。その後はモスクワに引退し、馬の飼育と品種改良に情熱を注ぎ、オルロフ・トロッターという新種を作り出しました。ナポレオン戦争時には自費で民兵を組織し、活躍しました。

長兄のイワン・グリゴリエヴィチ・オルロフは、慎重で質素な生活を送っており、オルロフ家の財産を守りました。四男のフョードル・グリゴリエヴィチ・オルロフは、軍人として活躍し、チェスマの海戦にも参加、聖エカテリーナ勲章を受章しました。末弟のウラジーミル・グリゴリエヴィチ・オルロフは、ライプツィヒ大学で学び、エカチェリーナ2世によって科学アカデミー総裁に任命され、多くの外国の学者をロシアに招きました。

オルロフ家の子孫：続く貢献と多様な才能

オルロフ家の子孫たちは、政治、外交、軍事だけでなく、科学、芸術、文学など、様々な分野で活躍しました。アレクセイ・フョードロヴィチ・オルロフ公爵は、デカブリストの乱の鎮圧や、露土戦争での活躍、パリ講和会議での全権など、重要な役割を果たしました。彼の息子ニコライ・アレクセーエヴィチ・オルロフ公爵も、外交官として活躍し、自由主義的な改革を推進しました。ミハイル・フョードロヴィチ・オルロフは、ナポレオン戦争に参加した後、自由主義者として農奴解放や共和制を主張し、秘密結社にも関与しました。

オルロフ家は、エカチェリーナ2世の時代におけるロシアの政治、文化、社会に大きな影響を与えた一族です。その栄華と衰退、そして子孫たちの活躍は、ロシアの歴史を語る上で重要な要素となっています。彼らが残した功績や遺産は、今日でも様々な形でロシア社会に影響を与え続けています。彼らの物語は、権力と富、愛と裏切り、そして時代の変遷の中で生き抜く人々のドラマを物語っています。オルロフ家の歴史を辿ることは、18世紀ロシアの歴史を深く理解することに繋がるでしょう。

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