啓蒙専制君主

啓蒙専制君主について

啓蒙専制君主（けいもうせんせいくんしゅ）は、主に18世紀後半のヨーロッパにおける君主制の一形態であり、特にプロイセン、オーストリア、ロシア、オスマン帝国などで見られました。この時期、君主たちは啓蒙思想を基盤にして「上からの近代化」を進め、政治や社会の改革に着手しました。

代表的な君主たち

この時代の啓蒙専制君主には、オーストリアのマリア・テレジア（在位：1740年-1780年）、プロイセンのフリードリヒ2世（在位：1740年-1786年）、ロシアのエカチェリーナ2世（在位：1762年-1796年）、オーストリアのヨーゼフ2世（在位：1765年-1790年）、オスマン帝国のマフムト2世（在位：1808年-1839年）などが含まれます。特にフリードリヒ2世は、啓蒙専制君主の象徴的存在として広く知られています。また、ポルトガルのポンバル侯爵セバスティアン・デ・カルヴァーリョや、一般に認知されていないスペインのカルロス3世、スウェーデンのグスタフ3世も啓蒙君主としての評価を受けています。特にグスタフ3世は、フリードリヒ2世の妹に影響を受けて啓蒙思想を取り入れた君主でした。

啓蒙専制君主の概念

いわゆる啓蒙専制君主は、当初、啓蒙思想を体現する絶対君主として理解されていました。しかし、フリードリヒ2世が哲学者ヴォルテールを招待した際に、不和が生じたという逸話は、啓蒙専制の体制が実質的には絶対君主制と変わらないことを示唆しています。このような背景から、啓蒙専制君主は「啓蒙絶対君主」とも呼ばれることがありましたが、近年ではその見解に対する批判が増しています。

この批判の主な根拠は、絶対王政が「社団国家」として理解される傾向にあります。具体的には、フランスのルイ14世の例を挙げると、彼の権力は個々の市民ではなく、特権的な身分団体に対して与えられていました。つまり、絶対王政とは君主権と特権的な集団の関係から成り立っているため、啓蒙専制君主は絶対君主に類推されるものとは限らず、その逆の関係にあると考えられます。

君主による改革の推進

例えば、ヨーゼフ2世は貴族の特権を制限し、宗教的寛容を進めることでカトリック教会の特権を弱体化させました。彼の政策は、社会構造を変革し、均質な国民を創出しようという意図を持っていたと言えます。このように、啓蒙専制君主は「上からの改革」を通じて社会を変革していったのです。また、フランス革命前のルイ16世も国家財政の危機に対処するため、貴族や聖職者の免税特権の剥奪を目指して改革を試みました。この点から見ても、彼は従来の絶対君主とは異なる立場にあったと評価されます。

ヨーロッパ以外の例

啓蒙専制君主の概念は、不単にヨーロッパのみならず、他の地域にも適用される可能性があります。清朝の同治帝や、明治維新に倣った戊戌の変法を推進した光緒帝も、上からの改革を進めた啓蒙的君主として位置付けられます。

結論

このように、啓蒙専制君主は単に啓蒙思想を取り入れた絶対君主という枠を超えて、社会構造を見直すための改革を行い、均質な国民の形成に寄与した点で特筆されます。彼らの政策は今日の社会や国家形成においても影響を与え続けています。

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