オレンジ油

オレンジ油：用途と性質、そして安全性の両面から

オレンジ油、別名オレンジオイルは、温州ミカンやダイダイといった柑橘類の果皮に含まれる揮発性の油、つまり精油です。油脂とは異なり、主成分はリモネンという物質で、柑橘類に含まれるビタミンCなどの水溶性成分は含んでいません。

オレンジ油の抽出には、主に果皮を低温で圧搾する方法が用いられます。水蒸気蒸留法も存在しますが、得られる成分組成はやや異なります。さらに、オレンジジュース製造の副産物から、溶剤抽出や濃縮ジュースの蒸留によって精油を得る方法もあります。これらの異なる方法で得られた精油を混合することで、一定の品質を保った製品が作られています。

オレンジ油は酸化しやすい性質を持つため、消費期限が非常に短く、多くの場合、抗酸化剤が添加されています。また、品質の均一化を目的として、他の柑橘類の精油が混ぜられたり、合成のリモネンが添加される場合もあります。

オレンジ油の主成分であるリモネンは、発泡スチロールやポリスチレン、ゴムを溶かす性質を持っています。ゴム風船程度の厚さであれば、塗布後数秒で穴を開けるほどの強力な溶解作用を示します。この性質は、ストーマ装具（人工肛門・人工膀胱の装具）の接着剤を剥がす際にも利用されています。

その他、オレンジ油は汚れを落とす作用があり、揮発性と引火性も併せ持っています。ゴキブリに対する忌避効果も報告されていますが、その効果はリモネンの含有量やゴキブリの種類によって異なることが分かっています。

オレンジ油は、食品や飲料への添加物、香水の原料、洗剤など、幅広い用途に使われています。日本薬局方にも収載されており、医薬品としても扱われています。

低温圧搾法で得られたオレンジ油は、アロマテラピーにも利用されています。臨床研究では、その芳香によるリラクゼーション効果や不安軽減効果が示唆されています。しかしながら、リモネンの酸化による光毒性や皮膚への刺激の可能性も指摘されており、皮膚への直接塗布は注意が必要です。短期間で酸化し、感作物質に変化する可能性があるため、皮膚への塗布は避けた方が賢明です。

オレンジ油は多様な用途を持つ有用な物質ですが、その性質を正しく理解し、安全に利用することが重要です。特に、皮膚への直接塗布は、光毒性や刺激の可能性を考慮し、慎重に行うべきです。

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