オンオフ変調

オンオフ変調（On-Off Keying, OOK）は、デジタルデータを搬送波の存在（オン）と非存在（オフ）によって表現する変調方式の一種であり、振幅偏移変調（ASK）の最も単純な形態として知られています。

基本的な原理

OOKでは、ある時間帯における搬送波の存在をバイナリの「1」に対応させ、搬送波が存在しない状態を「0」に対応させます。この単純な原理により、OOKは実装が容易であり、低コストで実現できるという利点があります。例えば、無線通信においては、電波の送信と停止を繰り返すことで情報を伝達します。より複雑な応用では、オンとオフの時間長さを変えることで、より多くの情報を伝達することも可能です。これは、モールス信号のように、符号の長さを変えて文字や記号を表現する技術に通じるものがあります。

応用分野

オンオフ変調は、無線通信におけるモールス信号の送信に利用されます。この方式は、基本的なデジタル復調回路を必要としないため、非常にシンプルな構成で通信を実現できます。また、OOKは、ISMバンド（産業科学医療用バンド）を使用するコンピュータ間のデータ通信にも利用されています。例えば、リモコンやワイヤレスセンサーなど、比較的低速なデータ伝送が必要な場面で利用されています。

さらに、OOKは無線周波数（RF）だけでなく、光通信システムにおいても利用されています。例えば、IrDA（赤外線データ協会）規格に基づく赤外線通信では、光のオン・オフを利用してデータの送受信を行います。光ファイバー通信においても、OOKは変調方式の一つとして使用されることがあります。

特徴と課題

OOKは、搬送波の振幅を大きく変化させるため、スペクトル効率の観点からは不利な面があります。スペクトル効率とは、与えられた周波数帯域でどれだけの情報を伝送できるかを示す指標であり、OOKは他の変調方式と比較して、単位周波数帯域あたりに伝送できる情報量が少ないと言えます。しかし、低速から中速のデータ転送速度であれば、搬送波振幅の立ち上がりと立ち下がりを調整することで、ある程度の効率改善が可能です。

より高速なデータ伝送が必要な場合は、周波数偏移変調（FSK）や位相偏移変調（PSK）など、より効率的な変調方式が一般的に用いられます。これらの方式は、搬送波の周波数や位相を変化させることで情報を伝達するため、OOKよりも高いスペクトル効率を実現できます。

まとめ

オンオフ変調は、搬送波の有無を利用してデジタルデータを表現する、非常にシンプルな変調方式です。実装が容易で低コストであるため、無線通信、光通信、ISMバンドでのデータ通信など、様々な分野で利用されています。スペクトル効率は低いものの、低速から中速のデータ伝送においては十分な性能を発揮します。より高度な通信システムでは、他の変調方式が利用されることが多いですが、OOKは、その簡便さから、特定の用途において依然として重要な役割を果たしています。

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