オンド・マルトノ協奏曲

オンド・マルトノ協奏曲

オンド・マルトノ協奏曲は、20世紀フランスを代表する作曲家であるアンドレ・ジョリヴェ（André Jolivet, 1905-1974）が1947年に作曲を完成させた作品です。この協奏曲は、当時としては比較的新しい電子楽器であったオンド・マルトノを独奏楽器としてフィーチャーしている点が最大の特徴と言えるでしょう。

作品の初演は、完成の翌年、1948年4月にオーストリアのウィーンで行われました。この歴史的な演奏では、作曲者であるジョリヴェ自身がオーケストラの指揮を執り、独奏オンド・マルトノは、この楽器の共同開発者でもあり、その第一人者として知られたジネット・マルトノ（Ginette Martenot）が務めました。作曲者自身と楽器の専門家による初演は、作品の意図を正確に伝える上で重要な意義を持ちました。

楽器編成

この協奏曲のためにジョリヴェが選択した楽器編成は、オンド・マルトノ独奏に加えて、かなり大規模で色彩豊かな管弦楽です。

管弦楽の編成は以下の通りです。

木管楽器: フルート2、オーボエ1、クラリネット2、イングリッシュホルン1、アルトサクソフォーン1、ファゴット2、コントラファゴット1
金管楽器: ホルン2、トランペット3、トロンボーン2、チューバ1
打楽器: ティンパニ、タンブリン、小太鼓2（おそらく異なる奏法やサイズ）、ウッドブロック、マラカス、シンバル（おそらくクラッシュシンバルなど）、ゴング、タムタム、大太鼓、シンバル（おそらくサスペンデッドシンバルなど）、トライアングル、むち、チューブラーベル、ヴィブラフォン、木琴
鍵盤・撥弦楽器: チェレスタ、ハープ
弦楽器: 弦5部

特に打楽器の種類が非常に豊富であり、オンド・マルトノの持つ多様な音色や表現力と相まって、極めて多彩で時に神秘的、時に力強い響きを生み出すことが意図されています。

楽曲構成と演奏時間

この協奏曲は、全体が三つの楽章から構成されています。各楽章は切れ目なく演奏されるわけではありませんが、明確な速度変化によって区分されます。構成は「急 - 急 - 緩」という独特の形式を取っており、これは一般的な協奏曲の構成とは異なります。

作曲者によれば、この楽章構成はギリシア神話に登場する伝説的な音楽家、オルフェウスの物語から着想を得ています。オルフェウスがその竪琴の力であらゆるものを魅了し、冥界にまで降りていく冒険を描いた神話は、この協奏曲の持つどこか神秘的で、非日常的な響きと呼応しているのかもしれません。

各楽章の速度表示は以下の通りです。

1. 第1楽章：Allegro moderato
2. 第2楽章：Allegro vivace
3. 第3楽章：Largo cantabile

演奏時間は、作品全体でおおよそ22分程度とされています。

アンドレ・ジョリヴェは、その音楽においてしばしば神秘主義や原始的なエネルギーを探求しましたが、このオンド・マルトノ協奏曲においても、電子楽器の持つ未知の響きと古代神話への着想を結びつけることで、独自の音楽世界を創出しています。

参考文献

最新名曲解説全集10 協奏曲III（音楽之友社）

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