オーガスタス・ハリス

サー・オーガスタス・ヘンリー・グロソップ・ハリス：多才な興行主、劇作家、そして俳優

サー・オーガスタス・ヘンリー・グロソップ・ハリス（Sir Augustus Henry Glossop Harris、1852年3月18日 - 1896年6月22日）は、19世紀後半のイギリス演劇界において、多岐にわたる才能を発揮した人物です。フランス・パリで生まれ、俳優、オペラ興行主（インプレサリオ）、劇作家として活躍しました。

生い立ちと初期のキャリア

ハリスは、劇作家であった父オーガスタス・グロソップ・ハリス（Augustus Glossop Harris、1825年 - 1873年）と、劇場の衣装担当であった母マリア・アン・ボーン(Maria Ann Bone)の間にパリで生まれました。幼少期をロンドンで過ごした後、パリとハノーファーで教育を受けました。

俳優を志したハリスは、1873年にマンチェスターのシアター・ロイヤル (Theatre Royal)で『マクベス』のマルカム役でデビュー。その後、バリー・サリヴァン(Barry Sullivan)の下で経験を積み、ロンドンのシアター・ロイヤル、通称ドルリー・レーン劇場 (Drury Lane Theatre)の支配人ジェームズ・ヘンリー・メイプルストン(James Henry Mapleson)の下で舞台主任を務めました。

シアター・ロイヤルの支配人として

1879年、ハリスはシアター・ロイヤルの支配人に就任。「現代パントマイムの父」、「アウグストゥス・ドルリオラヌス (Augustus Druriolanus)」という異名を取りました。彼は、ジャン・ド・レスケ(Jean de Reszke)、ネリー・メルバ、エマ・イームス(Emma Eames)、エマ・カルヴェ(Emma Calvé)といった、後の великиеオペラ歌手を世に送り出しました。ハリスが手掛けた最初のパントマイムは『青ひげ』、次いで『40人の盗賊 (The Forty Thieves)』でした。

1887年からは、シアター・ロイヤルでグランド・オペラの興行を開始。その成功を機に、オペラ興行に力を注ぎました。

劇作家としての才能

ハリスは、劇作家としても多くの作品を残しています。その多くは、ポール・ジョン・メリット（Paul John Meritt）やヘンリー・ペティット(Henry Pettitt)といった劇作家との共作です。

代表的な作品:

The World (1880年、ポール・ジョン・メリット、ヘンリー・ペティットとの共作)
Youth (1881年、メリットとの共作)
Pluck: A Story of ₤50,000 (1882年、ペティットとの共作)
A Sailor and His Lass (1883年、ロバート・ウィリアム・ブキャナンとの共作)
Human Nature (1885年、ペティットとの共作)
A Run of Luck (1886年、ペティットとの共作)
Pleasure (1887年、メリットとの共作)
The Spanish Armada (1888年、ヘンリー・ハミルトンとの共作)
The Royal Oak (1889年、ハミルトンとの共作。1923年の無声映画の原作)
A Million of Money (1890年、ペティットとの共作)
A Life of Pleasure (1893年、ペティットとの共作)
Dick Whittington (セシル・レイリー、ハミルトンとの共作)
Robinson Crusoe (1893年)
Cheer, Boys, Cheer (1895年、レイリー、ハミルトンとの共作)
The Little Genius (アーサー・スタージェスとドイツ語から翻案)
The Soudan (ペティットとの共作)
The Derby Winner (1895年、ハミルトン、レイリーとの共作。合衆国では The Sporting Duchess という題で上演。1915年と1923年の無声映画の原作)
Jack and the beanstalk, or, Harlequin and the midwinter night's dream (ハリー・ニコルスとの共作)
The Opera Cloak (L・D・パウルズとフランス語から翻案)
A Puzzled Painter (フランシス・クレメント・フィリップスとの共作。死後出版)
The Prodigal Daughter (1892年、ペティットとの共作)
Burmah (1896年、ペティットとの共作)

晩年と私生活

晩年のハリスは政治にも関心を寄せ、[1890年]]にロンドン・カウンティ・カウンシル(London County Council)の議員に選出されました。1891年には州長官に任命され、シティ・オブ・ロンドンの[[副統監]となりました。同年、下級勲爵士(Knight Bachelor)の称号を授与され、エキセントリック・クラブ(Eccentric Club)の議長も務めました。

1896年、ハリスはケント州フォークストン(Folkestone)で死去し、ロンドンのブロンプトン墓地(Brompton Cemetery)に埋葬されました。

1881年11月9日、フローレンス・エッジカム・レンドルと結婚。サー・オーガスタスの死後、フローレンスは1904年にエドワード・オコナー・テリー(Edward O'Connor Terry)と再婚しました。

遺産

ドルリー・レーンのシアター・ロイヤルには、ハリスを記念する噴水盤があります。フリーメイソンであったハリスにちなみ、メイソンのシンボルが施されています。

サー・オーガスタス・ヘンリー・グロソップ・ハリスは、その多才な才能と精力的な活動によって、イギリス演劇史にその名を刻みました。

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