オーガスタ・オブ・サクス＝ゴータ

オーガスタ・オブ・サクス＝ゴータ：王室の影で生きた女性の一生

オーガスタ・オブ・サクス＝ゴータ（1719年11月30日 - 1772年2月8日）は、イギリス王室の歴史において重要な役割を担った女性です。彼女はイギリス王ジョージ2世の長男、フレデリック・ルイス王太子妃として、後の国王ジョージ3世を産み育てました。ドイツ、ザクセン＝ゴータ＝アルテンブルク公フリードリヒ2世とアンハルト＝ツェルプスト侯の娘マグダレーナ・アウグスタを両親に持ち、アウグスタ・フォン・ザクセン＝ゴータ＝アルテンブルクとして生まれました。

1736年、16歳のオーガスタは、英語を話せないままフレデリック・ルイス王太子とセント・ジェームズ宮殿で結婚しました。夫は彼女より12歳年上でした。結婚生活は、夫が両親であるジョージ2世とキャロライン王妃と不仲であったため、ハンプトン・コート宮殿を拠点とした比較的穏やかなものでした。しかし、長女オーガスタ・シャーロット出産の際は、セント・ジェームズ宮殿へ移り出産しており、王室との確執がうかがえます。

夫であるフレデリック王太子は、王位継承権を持つ立場でありながら、父であるジョージ2世と対立していました。オーガスタもまた、義理の両親と良好な関係を築くことができませんでした。この家庭環境は、オーガスタのその後の人生に大きな影を落とすことになります。

1751年、フレデリック王太子が亡くなると、オーガスタは王位継承者である息子のジョージ王子の母として、政治的な影響力を持ち始めます。彼女は、ジョージ王子の教育係であったビュート伯（後に首相となる）と親しくなり、その関係は噂を呼びました。オーガスタとビュート伯の密会、あるいは恋愛関係ではないかという憶測が、世間に広がったのです。この噂は、オーガスタの評判を著しく損なうことになりました。

1760年、ジョージ王子がジョージ3世として即位すると、オーガスタの政治への関与はますます顕著になります。しかし、彼女の増長した権力と影響力は、国民からの反感を買うことになります。彼女は、多くの国民から傲慢で権力に酔っている人物として非難されるようになりました。

1772年、52歳のオーガスタは喉頭癌により亡くなりました。彼女の葬儀は、国民の怒りの的となりました。葬列には、彼女を侮辱する野次馬が多数集まり、棺が墓地まで運ばれる間も、非難の声が絶えませんでした。これは、オーガスタが晩年において国民からどれほど嫌われていたかを物語っています。

オーガスタとフレデリック王太子には、5人の息子と4人の娘がいました。その子供たちは、それぞれイギリスの歴史において重要な役割を果たしていきます。長女オーガスタ・シャーロットはブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテル公カール・ヴィルヘルム・フェルディナントと結婚し、ジョージ4世の妃キャロラインの母となりました。次男はジョージ3世、三男はヨーク公エドワード、四男はグロスター公ウィリアム、五男はカンバーランド公ヘンリーです。長女以外の娘たちは、エリザベス・キャロライン、ルイーザ・アン、キャロライン・マティルダです。

オーガスタ・オブ・サクス＝ゴータの生涯は、王室の華やかさとは裏腹に、不和と陰謀、そして国民からの激しい批判に満ちたものでした。彼女は権力と愛情を求めながらも、孤独の中で人生を終えたと言えるでしょう。彼女の存在は、王室の権力闘争と国民感情の複雑な絡み合いを象徴するものです。彼女の死後も、彼女への評価は分かれるままであり、イギリス王室史における彼女の位置づけは、今もなお議論の的となっています。彼女の生き様は、権力と名誉の裏側にある孤独と葛藤を私たちに示唆するものです。

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