グロスター公

グロスター公爵：栄光と影の歴史

グロスター公爵は、イギリス王室において、しばしば国王の息子に与えられる由緒ある爵位です。その名は、グロスタシャー州グロスター市に由来します。歴史を紐解くと、幾多のドラマと悲劇、そして不吉な影が付きまとってきたことがわかります。

初代から三代：消滅と復活の繰り返し

1385年、エドワード3世の息子、トマス・オブ・ウッドストックが初代グロスター公となりました。しかし、甥であるリチャード2世との対立により追放され、1397年にその生涯を終え、爵位は消滅します。

1414年、ヘンリー4世の息子、ハンフリー・オブ・ランカスターが二代目を継ぎますが、彼もまた政争に巻き込まれ、1447年に急死。再び爵位は消滅の道を辿ります。

1461年、エドワード4世の弟、リチャードが三代目となります。しかし、彼は後にリチャード3世として即位し、公爵領は王領に編入されます。ボズワースの戦いでリチャード3世が戦死すると、グロスター公爵位は150年もの間、誰にも与えられることはありませんでした。これは、それまでの三代のグロスター公が全て後継ぎを残さず亡くなったため、不吉な爵位とみなされたためです。

中世から近世：断絶と再興

長い沈黙の後、1659年、チャールズ1世の息子ヘンリー・ステュアートにグロスター公爵位が与えられます。しかし、彼もまた早世し、爵位は再び消滅します。
アン女王の息子ウィリアム王子やフレデリック・ルイスも「グロスター公」を名乗りましたが、正式な爵位には叙されていません。

ジョージ3世の弟、ウィリアム・ヘンリーが1764年、グロスター＝エディンバラ公として爵位を復活させます。これは、グロスター公爵位とエディンバラ公爵位を兼ねるものでした。その後、ウィリアム・フレデリックが爵位を継承します。

現代：新たなグロスター公爵

1928年、ジョージ5世の息子ヘンリー王子が新たなグロスター公爵となります。ヘンリー王子没後、その息子リチャード王子が爵位を継承し、現在に至っています。現在の推定相続人は、アルスター伯爵アレクサンダー・ウィンザーです。

歴代グロスター公爵一覧

第1期 (1385年): トマス・オブ・ウッドストック (1355年 - 1397年)
第2期 (1414年): ハンフリー・オブ・ランカスター (1390年 - 1447年)
第3期 (1461年): リチャード (1452年 - 1485年、リチャード3世として即位)
第4期 (1659年): ヘンリー・ステュアート (1640年 - 1660年)
第4期 (1764年, グロスター＝エディンバラ公): ウィリアム・ヘンリー (1743年 - 1805年)、ウィリアム・フレデリック (1776年 - 1834年)
第5期 (1928年): ヘンリー (1900年 - 1974年)、リチャード (1944年 - )

このように、グロスター公爵位は、イギリス王室の歴史と深いかかわりを持ち、数々のドラマを生み出してきた、魅力的で複雑な爵位なのです。その栄光と悲劇、そして不吉な影は、これからも人々の興味を引きつけ続けるでしょう。

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