オーガニック・シンセシズ

Organic Syntheses：有機化学合成の信頼できる情報源

Organic Syntheses（オーガニック・シンセシズ、略称：OS）は、1921年創刊の化学分野における歴史ある学術雑誌です。有機化合物の精密な合成法を詳細に記した論文を毎年刊行しており、その信頼性の高さから、世界中の化学者から高く評価されています。

始まりと歴史：第一次世界大戦と化学研究の必要性

OSの歴史は、第一次世界大戦中の1914年にまで遡ります。大戦によってヨーロッパからの化学物質輸入が途絶えたアメリカ合衆国では、化学研究の維持が困難な状況に陥りました。この危機的状況を受け、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校は「夏の学校」を開催。学生たちが様々な化合物の合成研究に取り組みました。

特に、写真用感光フィルムの製造に必要な染料の合成は重要な研究テーマでした。この研究は、イーストマン・コダック社の有機化学部門設立にも繋がっています。

この「夏の学校」は第二次世界大戦中も継続され、戦時協力に貢献しました。しかし、各化学会社が独自の研究環境を整えた1950年代には、役割を終え閉鎖されました。

「夏の学校」で開発された合成法は、学生によって記録され、当初は小冊子として配布されていました。1921年からは、正式な学術雑誌として『Organic Syntheses』の刊行が開始されました。それ以降、工業研究所や大学からの投稿を受け付けるようになり、発展を遂げています。

信頼性の高い情報：厳格な査読と検証

OSに掲載される全ての合成法は、厳格な査読プロセスを経て、複数の研究グループによる実験で確認されています。そのため、掲載論文の信頼性は非常に高く、研究者にとって貴重な情報源となっています。Org. Synth.という略記号も広く使われています。

デジタル化とオープンアクセス

1998年には、OSの過去の版と最新の号がインターネット上で公開されるようになりました。このオープンアクセス化により、世界中の研究者が自由にアクセスし、情報を得ることが可能となっています。これは、化学研究の発展に大きく貢献する取り組みと言えるでしょう。

まとめ

Organic Synthesesは、100年以上に渡り、有機化学の発展に貢献してきた歴史ある学術雑誌です。厳格な査読体制とオープンアクセス化によって、信頼性の高い有機合成法を世界中の研究者に提供し続けており、これからも有機合成化学における重要な情報源として存在し続けるでしょう。

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